兄の危うい食欲
私は寝室の鏡の前で、背伸びをして自分をアピールしてみた。すると、ソファでくつろいでいたはずの兄が、獣のような鋭い眼差しで私を凝視して立ち上がった。
「……すごいな」
「えっ、何が?」
「喉が鳴るほど美味そうだ。じっと見てると、我慢できなくなる」
兄がゆっくりと距離を詰めてくる。心臓の音がうるさい。ひょっとして、このままベッドに押し倒されて、私、食べられちゃうの!?
「待って、心の準備が!」
「準備? そんなの要らないだろ。早く味わいたいんだ」
兄の瞳には明らかな飢えが宿っている。もう逃げ場はない。覚悟を決めて目を閉じたその時、兄の手が私の背後のクローゼットへ伸びた。
「ようやく見つけた。ずっとここに隠してたんだよ」
兄が取り出したのは、特大のホールケーキの箱だった。
「リビングだと親に見つかると思って、寝室の棚に隠し場所を変えたんだ。冷やし忘れるとこだったぞ」
「……は? ケーキ!? 私のことじゃないの!?」
「何言ってんだ。お前より、この限定スイーツの方がよっぽど貴重なんだよ」
私は顔から火が出るほど恥ずかしくなって、そのまま布団に顔を埋めた。完全に自意識過剰だった。兄の熱い視線の先には、最初から甘いデザートしかなかったなんて。
呪文
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