海獣白ラッコ vs 妖獣ミケ
これは「純粋な戦闘力では白ラッコ、勝負そのものはミケ」という決着になりそうです。
開戦
街へ進出した海獣白ラッコは、崩れた建物から手頃なコンクリート塊を拾い、AIチップでミケの動きを解析します。
対する妖獣ミケは、生後三か月。作戦らしい作戦はありません。尻尾を立てて白ラッコへ駆け寄り、巨大な前足へ勢いよくじゃれつきます。
白ラッコは当初、それを攻撃と判断。石を構えて威嚇しますが、ミケはまったく怯まず、石のほうに興味を持って前足で転がし始めます。
白ラッコ優勢
体格、経験、道具の扱い、AIによる状況判断。どれを取っても白ラッコが上です。
ミケが飛びかかれば、白ラッコは前足で受け止める。
ミケが引っかけば、厚い毛皮で耐える。
ミケが甘噛みすれば、白ラッコも軽く噛み返す。
じゃれ合いのように見えて、ミケは次第に押されていきます。白ラッコのAIも、
「対象の攻撃力は低い。制圧可能」
と結論を出すでしょう。
このままなら白ラッコの圧勝です。
最大の転機
追い詰められたミケは、瓦礫の陰にちょこんと座ります。
そして反撃する代わりに、耳を少し伏せ、つぶらな瞳で白ラッコを見上げます。小さく鳴きながら、前足を白ラッコの鼻先へ伸ばします。
ここで白ラッコのAIに異常が発生します。
敵意:ほぼゼロ
保護対象である可能性:極めて高い
放置した場合の罪悪感:算出不能
かわいさ:測定上限突破
白ラッコは石を落とします。
ミケはその瞬間、白ラッコの胸元へ飛び込み、毛皮にしがみついてゴロゴロと喉を鳴らします。これは攻撃ではありません。しかし、白ラッコから完全に戦意を奪う決定打です。
決着
白ラッコはミケを振り払えません。
むしろ寒がりの白ラッコにとって、ふわふわしたミケは非常に暖かい。やがて白ラッコは地面に仰向けになり、腹の上でミケを遊ばせ始めます。
ミケは勝ち誇ったように白ラッコの鼻を前足でぺしぺし叩き、そのまま丸くなって眠ります。
白ラッコのAIは最終的に、こう判定します。
「戦闘続行不能。保護および共同生活へ移行する」
勝者
妖獣ミケの判定勝ちです。
肉体的には白ラッコが圧倒的に強く、真面目に戦えばミケに勝ち目はほとんどありません。しかしミケの本当の能力は、「相手を戦わせないこと」です。甘える、じゃれつく、つぶらな瞳で訴えるという三段攻撃が、白ラッコのAIと保護本能を完全に攻略しました。
ただしミケ本人は、戦いに勝ったつもりすらありません。
「大きくて暖かい、新しい遊び相手を見つけた」
それだけだと思います。
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