猫のあしあと
私が思わず額を押さえると、彼女はきょとんとして、ピンク色のシャツをぺたぺたと叩いた。そこには大きな猫のイラストと『SAGET』の文字。
「えへへ、これね、一番のお気に入りなんだよ! なんてったって、猫のプリントが私みたいで可愛いし」
「そこじゃないんです。今日は予約した素敵なカフェでランチでしょう? もう少しこう、お洒落なワンピースとか、せめて襟のある服とか……」
彼女は青いジャケットを脱ぎ、猫耳をぴくりと揺らしながら小首を傾げる。
「えー? カフェでしょ? 美味しいスイーツを食べるなら、動きやすさが一番じゃない?」
「動きやすさで選ぶ場所じゃないですよ!」
私は呆れて溜息をつく。彼女は相変わらずだ。お出かけといえばいつも通り、目的地より道中の寄り道の方が長くなりそうな予感に、思わず笑みがこぼれてしまう。
「もう、勝手にしてください。でも、お店で浮いても知りませんからね」
「大丈夫! 私の可愛い尻尾で視線を集めるから、服なんて目立たないって!」
尻尾をぶんぶんと振り回す彼女に、私は苦笑しながら玄関のドアを開ける。やっぱり、この格好の彼女と一緒に歩くのが、私にとって一番の日常なのかもしれない。
「さあ、急ぎますよ。予約の時間が過ぎちゃいます」
「あ、ねえねえ! あそこの花壇にいる猫、ちょっと見に行かない?」
「だ・か・ら! 寄り道禁止です!」
こうして、今日も賑やかな一日が始まっていく。
呪文
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