冬風の冷たいツッコミ
どこまでも広がる真っ青な空の下、足元には新雪が真っ白な絨毯のように敷き詰められている。
厚手のパーカーに身を包んだ美羽は、太ももを直接撫でていく刺すような冷風に、ようやく決定的な違和感を覚えた。
「どうしたの美羽、急に止まって」
後ろから歩いてきた親友のサクラが首を傾げる。美羽は顔を真っ赤にして、その場に勢いよくしゃがみ込んだ。
「サクラ、止まって。私、人類史に残るレベルの大失敗をしちゃったかもしれない」
「え、何よ。またスマホの画面でも割ったの?」
「違うの。もっと致命的で、明日から外を歩けなくなるくらい深刻な事態なのよ」
「大げさね。何よ?」
美羽は上着の裾を必死に引っ張りながら、消え入りそうな声で白状した。
「……下半身、何も履かずに家出てきちゃった」
「はあ!? アンタ、玄関の鏡でチェックしなかったの?」
「したよ! でも、このお気に入りのパーカーが絶妙に長くて、ダボッとしたシルエットが可愛かったから、すっかり満足しちゃって……。まさか下着さえ履いてないなんて、今の今まで気づかなかったんだもん!」
「バカじゃないの! 全裸よりタチ悪いわよ! あはは、だからそんなにスースーしてたのね」
サクラは雪を蹴り飛ばしながら大爆笑する。
「笑いすぎ! これじゃ立ち上がれないよ、一歩も動けない! 助けて!」
「いいじゃない、解放感あふれる最新スタイルってことで。ほら、立ちなさいよ」
「無理! サクラのコート貸して! 今すぐ私を包囲して隠して!」
「ヤダねー、面白いからこのままコンビニまで競争しようよ」
「鬼! 悪魔! サクラのバカー!」
雪原の真ん中で、真っ赤な顔をして丸くなるパーカー姿の少女。
冬のいたずらな風は、今日も容赦なく彼女の剥き出しの肌を冷やし、うっかり者の冒険に冷たいツッコミを入れ続けていた。
呪文
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