ただの英雄
『アホらし。百人撃てば、百人撃った犯罪者でしょ』
そう言って彼女は、決してこの仕事を選ぼうとしなかった
けれど運命もまた、彼女の才能を手放そうとはしなかった
どうやら天才というのは、仕事に選ばれてしまうものらしい
『逃げたいよそりゃ。こんな才能ほしくなかった。でもさ。私が撃たなきゃ、もっと多くの命が撃たれるって。声が聞こえるんだよね。お前がやれって。はーぁ。これで私は地獄行き決定だね』
「ははは。まぁしかし、平和な天国よりも、刺激的な地獄の方が、君には似合うと思うよ。その時はきっと、地獄の無法者共を鎮圧してくれと、神様から君に依頼がくるんだろうさ」
『笑えねっす』
かくして、戦場で百を優に超える敵兵を葬った彼女は
罪悪と引き換えに祖国を守り、ただの英雄になった
呪文
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