第1話 ありふれた日常2
途中緑髪にポニーテールのメイドとすれ違う。
そのメイドは二人に気づき挨拶をしてきた。
??「月美(つぐみ)様にラーヴィ♪おはようございます♪」
綺麗にお辞儀をすまし、笑顔を見せる。
主従関係から、月美様と呼ばれたほうが主。ラーヴィと呼ばれたほうは執事のようだ。
が、そんな綺麗な挨拶にかまう暇は、2人にはなかった。
月美「ミント!おっはー!ごめん!!遅刻ギリやけん!あとは頼んだぁ~!」
ラーヴィ「おはよう、ミント。今日も励んでるな。また後で!」
颯爽と駆け抜けていく二人を微笑み見送る。
会話の内容から、彼女はミントと呼ばれているようだ。
ミント「慌ただしいなぁ♪さて、お掃除つづけなきゃ♪」
ミントは二人を見送った後、執務に戻り掃除を手際よくこなす。
この城の清潔は彼女たちメイドが保っているようだ。
玄関にたどり着いた二人。月美はうっすら汗をかきながら息を荒げる。
月美「ぜひぃぃい!なんでうちの城こげん広かとねぇ!」
苦言を言いながら準備された車の後部座席に月美は座る。
執事は運転席に座り込みシートベルトを締める。
ラーヴィ「そも、早く起きていればだな?」
月美「んも!アンタしつこかぁ!わかっちょるがな!」
早く起きていれば問題ないだろ?と言わんばかりのラーヴィの言葉を断つ。
月美「窓開けて!あっちいい!」
必死に走ったせいだろう。冬だが走り切ったおかげで体全身が熱い。
学生服のブレザーを脱ぎ、朝食として準備されたスムージーを一口飲む。
美味しかったのか、すっかり飯の顔の少女に変わり、すごい音を立てながらスムージーを吸い込む。
ラーヴィはリクエストに応じて車の窓を開る。そして、アイドリングさせていた車を目的地へ走らせる。
開けた車窓から12月の冷たい空気が車内に流れ込み、月美は火照った体を冷ます涼を得られてご満悦だ。
時計は8時15分を指す。月美が通う学校までは車で約7分、遅刻の8時25分のギリギリラインは必至の時間帯。なのだが?
月美「ん~♡マカロンうんまか♪これ、天神の『赤い風船』のマカロンやね♪復刻版うますぎか!」
朝食のマカロンとスムージーを堪能する。呑気MAXの車内。
だが、その邪魔をしないように華麗なドライビングで渋滞をすり抜けながら、車をブレずコントロールするラーヴィ。
素晴らしい運転テクだが、内心は穏やかでは無いようだ。
ラーヴィ「まったく、昨日散々、そのお店のマカロンを朝食にしたいとリクエストしておいて」
あきれながら呟く。おそらく、この朝食は彼が直々に買いに行ったのだろう。
執事としての務めはしっかりこなしているようだが、呑気な主には些か御不満のようだ。
月美「そうばい♪これでおにぎりに匹敵するエネルギー得られるとか♪マジリスペクト☆」
ラーヴィ「不摂生にならなければいいのだがな。まぁ、アンタはよく食べるから大丈夫だろうが」
月美「んま!アタシ相手にそんな不失礼なこと!よく言うわね?アタシを誰だと思っちょるんね!」
2個目のマカロンを平らげ、スムージーを啜る月美。
正直、言動からでは、自由奔放な少女にしか感じない方も多いかもしれないが
ラーヴィ「魔王、アウディ・ヴィデバラン・夢崎(ゆめざき)国王様が統治されている福岡国の魔王女様、『夢崎月美(ゆめざきつぐみ)』様でございましょう?」
ラーヴィの口から、彼女が魔王女とつぶやかれる。
月美「そーばい!もっと敬いなさいな!」
どや顔でスムージーを飲み干す。
とてもじゃないが、魔王女様?と首をひねってしまう方も多いかもしれないだろうが、本当である。
そも、魔王?魔王女?そしてそれに仕える執事にメイド?
魔王が治めるとなれば、ここは魔界なのだろうか?
ラーヴィ「公務される貴女なら、敬えるがな。普段のアンタは、正直うんざりだ」
月美「んま?でも、アンタの包み隠さん発言は、まぁ良しとしよう」
誇らしげな表情で、どっかりと後部座席に座す。
その間も車は目的地に向かっており、やがて月美が通う高校の門にさしかかる。
門前にはオークの門番が、門を閉める準備をしていた。時計は8時23分...タイムリミットは2分を切った。
ラーヴィはステアリングを曲がる方向と逆に切り、ドリフトしながら門前へ直行する…が、門番は慌てる様子はない。
普通、高速でドリフトしながら向かってくる車があれば、慌てるだろう?
つまり、この光景が日常なのだろうか…
むしろ、門番は微笑ましい様子で、その車を待ち構えている様子だった。
寸分ズレなく、いつもの停車位置に車を止めるラーヴィ。
ラーヴィ「8時23分45秒、行け!」
月美「言われんでも☆アリガト♪」
いつの間にかブレザーをはおり、颯爽と車から降りる魔王女様。
門番『お早うございます!魔王女様!』
2人の門番のサラウンドボイスの挨拶を受ける月美。
月美「おっはよ♪セーフでしょ???それじゃ!教室に向かうぜぇぇぇ!」
8時24分5秒、月美は門を超えて校内へ走り去っていく。
魔王女様が校内に入るのを確認した後、門番の一人は門を閉める。
もう一人の門番はラーヴィに近づき声をかけてきた。
門番A「ラー坊も毎日お疲れ様ばい、ありがとうな。魔王女様をいつも無事送り届けてくださって」
丁寧にお辞儀をする門番のオーク。車から降り一礼するラーヴィ。
ラーヴィ「正直、もっと早く起きて欲しいのですがね」
つい、正直に愚痴が出てしまう。まぁまぁといった仕草でラーヴィをなだめるオーク達。
どうやら、人と魔族であるオーク族は、この国では親交があるようだ。
すっかり打ち解けているようすが伺える。
門番A「まぁ、魔王女様も遅くまで勉学に公務もしっかりこなされていますし。十七歳の女子高生には深すぎる負荷だけんなぁ」
しみじみと語る門番オーク。人間味が溢れすぎる仕草でラーヴィに語る。
門番B「本当になぁ?体お大事にしてほしいばかりなんだが。ラー坊!お前さんと城の皆が頼りなんじゃけんな!頼むばい!」
博多弁を流調に話すオーク二人。先ほどまで、ラーヴィは彼女を不甲斐ないと感じていたが、彼女は高校生でありながらも、魔王女としての公務も全うしているとのだ。
執事であるラーヴィはもちろん存知ではある。仕える主であるのだから。
色々と思うところは多々あるが、グッと飲み込む。
そして、純粋に魔王女である月美を推しているオークの門番に、社交辞令かもしれないが語る。
ラーヴィ「心得た。主が臨んだ区分のこと、フォロー気を付けます」
今日も朝一番の仕事を終えた。
丁寧に門番二人に一礼し、車に戻る。静かにエンジンをかけ、安全運転で城まで戻っていく。
8時25分。高校のチャイムが高らかに鳴り響く。
西暦2500年から一萬五千年後。我々の時代、世界では福岡県と呼ばれた土地ですが...
そこは、魔王が納める国になっていました。
第1話 ありふれた日常3へ続く
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