第1話 ありふれた日常3
車から降り、メイドの少女に鍵を渡し挨拶をする。
ラーヴィ「ルミィア先生、車の手配感謝します」
メイドの少女はルミィア先生と呼ばれ小さく頷く。
ピンク色の髪、黄金に輝く美しい瞳。
尖った耳に華奢な体系。そして、肌の色はダークブラウン。
耳の特徴と肌の色から、恐らくダークエルフと、初見では誰でも思うだろう。
ルミィア「おう、遅刻しそうな度に月美の送り届けご苦労。車の運転にも慣れたかぇ?」
車のカギを受け取り、耳をピコピコと動かす。
普段は歩いて登校していたのだが、今日のように寝過ごした場合はラーヴィが車で送り届けていた・・・割と高頻度で。
故に、門番のオークは見慣れた光景だったのだ。
ラーヴィ「おかげさまで、先生のご指導のおかげでな」
ルミィア「左様か♪異邦人のお主でもわかりやすいのなら、あのマニュアルは十分通用するな♪」
上機嫌に耳をさらにピコピコと動かす。感情表現が耳に現れるようだ。
ルミィア(急拵えとは言え、この車の公道実験も済ませられて一石二鳥じゃ♪)
内心そう満足していた。
どうやら実験として、この車を提供していたようだ。
そして異邦人と語ることから、ラーヴィは外国から福岡に訪れていたようだ。
ルミィアは着ている衣服のポケットに潜ませている箱からタバコを1本取り出し、魔術の火で点火し一服美味しそうにタバコを服す。
ラーヴィ「ところで先生、聞きたいことが」
ルミィア「なんじゃい?藪から棒に」
スパスパとタバコの煙をラーヴィにかからないよう上に飛ばしながら聞くルミィア。
ラーヴィ「隠し事ありません?」
ルミィア「なぜそう思うんじゃ?」
どうやら、ルミィアの隠していた意図がバレたのだろか。表情は変えず、若干冷汗を感じるルミィア。
ラーヴィ「いつもの車より、マナの消耗が激しくてな?どういう仕組みなんだ?」
冷静をそのまま保ちながら、内心ギク!!と動揺するルミィア。図星のようだ。
ラーヴィ「この車しか準備出来ないと聞いたところから、おや?と思いました。案の定、いつもよりマナが吸われる感じがしました。あれは何?」
図星どころか、確信を貫かれたルミィア。
ルミィア「んま、お主なら無茶ぶりしてもかまわんだろうと思った故な。有り余るマナを保有している故に、マナ切れはないじゃろ」
一萬五千年後の世界では、魔力やマナといった超常的な力が存在するようだ。
車の動力にマナが使われていることから、超未来では、燃料、電力の代わりとしてマナが使われているみたいだ。
実際、魔王や魔族が存在するのなら、あり得ることだ。
ルミィア「年甲斐もなく、どうしてもあの車の超古代機能を試してみたくての。慌てていたお主らを利用させてもらったところじゃ」
一先ず認める。察しのいいラーヴィには、これ以上隠し通すのは悪手と思い、タバコを咥えたまま両手を上げる。降参の仕草だ。
ラーヴィ「別に責めているわけではなくて・・・」
超古代機能?に一瞬気を取られたが、追及すると後が長くなりそうな気がしたので聴き流す。
それよりも【年甲斐もない】に、なぜか少し気が触れた。少し思い返すと、ポンと記憶が浮かんだ。
ラーヴィ「そういえば、主が言っていたな。たしか先生は『アラサウザン』だったか?」
アラサウザンド・・・恐らく月美は、Around Thousand(千歳手前の歳)だと、ルミィアの年齢をラーヴィに伝えたのだろう。
人間世界であれば、29歳《アラサー》、39歳《アラフォー》、49歳《アラフィフ》等は、聞かれるかもしれない。
また健康御長寿なら、99歳《アラハン》も珍しいかもしれないが、稀にあるかもしれない事例だろう。・・・が
199歳《アラトゥハン》や、499歳《アラフィフハン》、等は、長寿種にはあるのかもしれない。
自分が999歳《アラサウザン》と月美に紹介されたことを知り、咥えていたタバコの残りを一気に服し終えると、火を消しポケット灰皿に吸殻を静かに入れる。
ダークブラウンの肌を上気させながら、震えるルミィア。恥ずかしがっているのだろうか?
ルミィア「な!?月美が!?わ、儂の歳をお主に言うたとでも?」
頷く執事。
ラーヴィ「来年で千歳を迎えるからとか?だから先生の事を、アラサウザン・・・?とか言ってましたが」
それを聞いた途端、ルミィアから怒気が発せられる。
何故怒っているのか理解できないラーヴィ。
実は、ルミィアは、歳に対してはけっこう気にしていた。
間もなく千歳になるのを気にして、憂いていた事は、誰にも秘密にしていた。
月美は知っていたのだが、ふと口が滑ったのだろう。
が、秘密をバラされた当人からしてみれば、それ相応に羞恥心を刺激され、怒りが込みあがるようだ。
ラーヴィ「先生?大丈夫ですか?」
ルミィア「ん、こちらとしては有用な情報をありがとう。月美にはハイエルフ直伝のお仕置きをせねばならぬの」
ラーヴィ「ハイエルフ直伝のお仕置き?主はいったい何を?」
ハイエルフ直伝のお仕置き・・・何だそれ?
ルミィア「よい、ともかく儂の年齢については口外するでないぞ?もしすれば・・・お主もお仕置きじゃぞ?」
知った執事にも釘を刺すルミィア。もとよりそのつもりはない執事は頷くだけだ。
ラーヴィ「それじゃ、先生。僕はこれで」
ルミィア「おう、任務に励んで来い」
こうして二人は別れ、ラーヴィは任務に向けて準備をする為ある場所へ向かう。
ルミィアはラボに戻り、月美へのお仕置きをどうするかプランを練ることに。
そのころ月美は授業中、大きなくしゃみをしていた。
月美(ん~~?誰かアタシのうわさ話でもしとるん??)
第一話 ありふれた日常4へ続く
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