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ことほぎ荘へようこそ! (AI Remastered)

使用したAI NovelAI
がたんという車体の揺れで、意識が現実に引き戻された。
バスの窓の外に広がるのは、見渡す限りの山の緑。道路はあまり手入れされていないようで、道を行くたび、曲がるたびに車内が左右に揺れている。

都心から電車で一時間半。そこからさらに、バスで揺られること二時間あまり。
乱立する木々の群れを抜け、急速に広けた視界に心奪われる。なだらかに広がる下り坂の先に、一面に広がる田園風景を望むことができた。

「間もなく、八ツ木坂(やつぎざか)、八ツ木坂――」

  ◆

大学卒業後、新卒でうっかり引き当ててしまったブラック企業に嫌気がさした俺は泥沼の退職交渉を乗り越え、めでたくクソ職場に退職届を叩きつけることができた。
しばらく娑婆のことは忘れ、会社に搾取された時間を取り戻したい。そんな事を考えながら、スマホの画面を手繰っていた俺の目に、『民泊で体験する田舎生活!』というキャッチフレーズが飛びこんできた。
都会の喧騒を忘れ、田舎でスローライフ体験をするのも悪くない。そう思った俺は、サイトに設置されたメールフォームから、予約の申し込みを始めたのだった。

あらかじめメールで送られてきた住所と写真を頼って、さらに小一時間。ようやく見つけだした一軒家の玄関口に、俺は立っていた。
半信半疑のまま家の中に呼びかけてみると、ぱたぱたという足音と共にエプロンに身を包んだ妙齢の女性と、旦那さんらしき純朴そうな男の人が現れる。この民泊を経営する、若夫婦といったところだろうか。

「ようこそ、ことほぎ荘へ。……といっても、民泊なんで私たちの家と兼用なんですけどね」

靴を脱ぎ、上がり框に足をかけたその時、物陰から顔を覗かせた少女と目があった。どこか垢抜けない、素朴な印象の女の子がおずおずとこちらを窺っている。

「ほら、お前もご挨拶なさい」

旦那さんに促され、少女は恥ずかしそうにぺこりとお辞儀をする。シックな白いブラウスに、青いプリーツの吊りスカート。長めに伸ばした髪を二つ結びにしたおさげが、つられるようにしてふわりと揺れた。

「姪っ子さんですか?」
「いいえ、娘の里夏(りか)です」
「えっ」

驚いた。二人ともまだ二十代くらいで、小学校高学年くらいの娘がいるようにはとても見えなかったからだ。

「はじめまして、お兄さん。お荷物、お持ちしますね」

目の前の少女――里夏ちゃんは、傍らに置いてあったボストンバッグを持ちあげると、はにかむように微笑むのだった。

呪文

入力なし

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