水底の案内人
波打ち際で、真希は必死に声を張り上げた。彼女の足元、浅瀬を滑るように進んでいるのは、青く光るイルカのおもちゃだ。いや、おもちゃにしては動きが良すぎる。まるで生きているかのように、しなやかなヒレを動かし、真希の膝をかすめて沖へと向かっていく。
「あーもう、どこ行くのよー!溺れたらどうするのさ!」
「ピーッ!」
「えっ、今鳴いた?しかも、あっち指してる?」
イルカの鼻先が、水平線の彼方にある小さな島のようなものを指し示した。真希が困惑しながら水に浸かると、イルカは満足そうにくるりと一回転した。
「もしかして、何か隠し財宝でもあるわけ?……いや、そんなはずないか。でも、楽しそうね」
真希はため息をつきつつも、唇の端を上げた。足元の砂が波にさらわれ、黄色い花びらが水面を彩る。
「よし、分かったわ。少しだけ付き合ってあげる。でも、夕飯の時間には帰るからね!」
そう言って、真希は水しぶきを蹴って走り出した。青い相棒は、期待に応えるように軽快な音を立てて波間を跳ねた。いつもと変わらない砂浜が、今日はどこか別の場所へと続いているような、そんな予感がした。
呪文
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