Chant de Noel
「あれ?写真?」
ここ数ヶ月の間にスマホで撮り溜めた画像をプリントした葉書サイズの写真を眺め、一人炬燵で温まりながらニヤニヤしていた私の肩越しに双子の妹の声が降ってきた。
うわぉ!?
ビックリしたじゃない!もう!
「あ、ごめん。ビックリした?」
「なにをニコニコしてるのかなぁと思って。」
ニコニコ…まぁ『ニコニコ』に見えたのなら、それで良いのだが…双子の妹を溺愛している私の事だ、絶対ニコニコなんて可愛らしい表情では無かったはずだ。どこぞの幼稚園児よろしく二チャッとしたイヤらしい顔だったに違いない。
…ま、そんな事はどうでもいいか…。
これよコレ、と積み重ねられた写真の束から数枚を手に取り炬燵の上に広げて見せれば、おお!とか、へえ!とか言いながら私の左右に陣取り、炬燵に潜り込んでくる妹達。
狭い狭い。
なんでわざわざ横に座るかな?
いや、別に良いけれどね?
「随分たくさん撮ったねぇ。」
「ね。いつの間に、って感じ。」
そりゃまあ、イベント事に限らず日常的に撮ってるからね。数も増えるってものさ。お陰様でメモリーはアっという間にパンパンになっちゃうんだけど。
そんなこんなでデータ整理ついでにこうしてプリントしている訳だ。
「あ、これ。姉ちゃんのリクエストで撮ったやつだ。」
きゃいきゃいと騒ぎながら写真を眺めていた妹達が、ある一枚に目を止めた。
白と黒、色違いのキャミソールだけを纏った二人が憂いを帯びた眼差しでこちらを見つめている・・・そんな一枚。普段の姿を写した他の写真と違って、背景や舞台装置を整えて撮った、いわゆるポートレート。肖像写真である。
「どれ?…あぁクリスマスにお祖父ちゃんちの応接間で撮ったやつかぁ。あれ寒かったよねぇ。」
「寒かった寒かった。エアコン壊れてんだもん。」
え?寒かった?
確かにエアコンはつけてなかったけど・・・
ヒーターつけてたじゃん?
「それ、姉ちゃんの方に向けてたでしょ?」
「そうそう。ボクらの方に向けると蝋燭が揺れるから、って。」
ああ、そういえば・・・そうだったかな。
風量が強くて蝋燭が消えちゃうから吹き出し口を私の方に向けたんだっけか。
「おかげで冷気がヒヤ~・・・て漂って来てさぁ・・・」
「床が板の間だから冷たかったしね。」
そ、そうだったのか・・・
それならそうと言ってくれれば良かったのに。
「いやぁ、姉ちゃんノリノリでセッティングしてたからねぇ・・・」
「なんか茶々入れるのも悪いな、って。」
なんってこった・・・知らずとはいえ妹達に強いていたとは・・・
己の至らなさに頭が痛くなる。
「でもさでもさ、この表情は良かったでしょ?」
「ねー。怪我の功名っていうか、禍を転じて福と為す、みたいな?」
ん?どゆこと?
確かにこの時の表情の作り方は見事だった。アンニュイな感じで~とか、寂し気な感じが欲しい~とか、別に演技の経験がある訳でもない子達に向かって、そこそこ難題とも思える注文を付けたにもかかわらず、思い通りというか理想にかなり近い表情を作って見せたのだから、驚きと共に感心したものだが・・・。
「これねぇ、足が冷たくって渋い顔になってるの。」
「そ、演技じゃなくって、素。」
Oh・・・
いま明かされる真実・・・
「でも良かったんだよね?」
「姉ちゃんはしゃいでたもんねぇ。サイコー!って。」
その通り・・・思いがけず撮れた奇跡の一枚!みたいに思えてテンション爆上がりだったもんなぁ。
もう済んでしまった事な上に当人たちが文句のひとつも言わないのだから、それほど気に病む事ではないのかもしれない。しれないが・・・なんかこう、自分にがっかりしたと言うか・・・ちょっとモヤる。
そんな私の雰囲気を察してか、妹達が甘える様に左右から寄り掛かって来る。
こういうところが実に愛い。
「姉ちゃんが引け目に感じてるなら・・・」
「ひとつお願いしちゃおうかなぁ?」
・・・う。まぁこの子達の言う事だ、それほど無茶な要求ではないだろう。
いいよ、言ってごらん。
「お、やった!じゃあねぇ・・・」
私を挟んで両隣の妹達が顔を見合わせてニタリと笑う。
え?なになに?・・・うっわ・・・こわっ!?
え、と。
お手やわらかに・・・?
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