私の居場所と憧れの先生#茶道部
ガラガラと作法室の障子戸が開いて、聞き慣れた優しい声が響いた瞬間、わたしの心臓は今日一番のスピードで跳ね上がった。
わたしはカナ。どこにでもいる普通の女子高生。
普段の教室では、大人しくて自己主張も苦手で、極力目立たないようにひっそりと過ごしているけれど……この茶道部だけは、わたしにとって特別に心が落ち着く大好きな居場所。
特に顧問の先生たちが帰ったあと、残った女の子の部員同士で『今日のアレ美味しかったね』なんて他愛もないおしゃべりをする時間が、毎日の最高の心の癒しだったりする。
女の子しかいない空間だからって、完全に油断していた。
いつもの教室での窮屈な自分を脱ぎ捨てるみたいに、ミニスカートのまま畳の上でリラックスして胡坐をかいちゃって、膝を立てて思いっきり無防備な姿勢でお喋りに花を咲かせていたの。
しかも、その姿を見られた相手が、よりによってアキト先生だなんて……!
アキト先生は、わたしの担任でもなければ、茶道部の顧問でもない。授業すら担当してもらったことがない、理科の先生。
でも、以前わたしがちょっと進路のことで悩んでいたときに、準備室の前を通りかかった先生が『どうした? 話くらいなら聞くぞ』って、優しく相談に乗ってくれたことがあって。
それ以来、誰にも言えない本音を聞いてくれる先生に、わたしはすっかり心を許しているし、ほんのちょっぴり……ううん、かなり憧れてる。
そんな大好きな先生に、教室での『おとなしい優等生』とは似ても似つかない、ミニスカートで胡坐をかいているところを見られちゃうなんて、恥ずかしすぎて頭から湯気が出そう!
「おっ、いつもの教室での静かな雰囲気と違って、なんだかすごく楽しそうだな。茶道部のカナは、結構ワイルドにリラックスするタイプなんだな(笑)」
『せ、先生……っ!! 違うんです、これはその……女の子だけだったから、つい……!』
慌てて足を崩して正座に直そうとするけれど、焦れば焦るほど制服の裾が気になって、顔がますます真っ赤になっていくのが自分でもよく分かる。
「ははは、いいんじゃないか? 自分の素を出せる場所があるのは良いことだ。……じゃあ、戸締りするから荷物をまとめたら校門まで行こうか」
前髪の奥の目を優しく細めて、困るわたしをからかうように笑うアキト先生。
憧れの先生に秘密の姿を見られちゃった恥ずかしさで胸がいっぱいだけど、先生が『オレの前ではそのままでいい』って言ってくれたみたいで、なんだかすごく特別な嬉しさがこみ上げてくる。
夕日に染まる畳の温もりを感じながら、わたしは急いでカバンを抱え、先生の待つ廊下へと一歩を踏み出すのでした。
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