爆破しまくり #科学部
『助手君! 今日の部活は遅れずに来るのだぞ!人類の歴史が、今日、理科室で塗り替えられる!世紀の瞬間に立ち会えるのだからね! 感謝したまえ!』
風を切って去っていく、白衣の裾。
その場に居合わせた友人Aが、目を輝かせてオレの肩を叩く。
『おい、今の! 科学部部長のセリカ先輩だろ? あんな超絶美少女と毎日二人きりとか、お前前世でどんな徳を積んだんだよ!あの自信に満ちた目と童顔のギャップ!インテリな白衣から覗く白いふともも……。まさに、学園の至宝だよな!去年、全校生徒を感動させた『オーロラ再現イルミネーション』も先輩の発明だろ? 天は二物を与えすぎだぜ……』
「……はは、まあな」
オレは乾いた笑いを返すしかない。
お前が羨んでいる、その『至宝』の本当の姿を見たくないか?
オレはいやだぜ
「さあ助手君! 見てくれ! これが私の最新作『全自動・概念超越型コーヒーメーカー』だ! 量子力学を応用し、豆を挽く振動を次元跳躍させることで、飲む者のIQを一時的に200まで引き上げる夢のデバイス! 理論上、失敗の確率は0.0000001パーセント! さあ、スイッチ、オン!!」
……嫌な予感しかしない。案の定、装置からは『ギュイィィィィン!』という、家電製品からはおよそ発してはいけない異音が響き渡る。
「……先輩、離れ――!!」
ドォォォォォォン!!
爆風に煽られたセリカ先輩を、咄嗟に抱きとめる。
「……っ、先輩! ケガはないですか!?」
腕の中で震える先輩。よかった、無傷だ。……あー、でも、このパターンは…
「ふえぇぇぇん! 助手君、助手君! なんで!?なんでぇ!? 計算は完璧だったのに、ハンダ付けが甘かったのか、それとも量子ビットの揺らぎが私の情熱に耐えきれなかったのか、あんなに徹夜して設計図引いたのに、私の三日間を返してよ、おまけにこの白衣、お気に入りだったのに煤で真っ黒だし、これじゃあ明日の学会発表……あ、学会なんてなかったけど、とにかく私のプライドがズタズタだよぉぉぉ!」
いつもの早口長文愚痴。オレの胸に顔を埋めて、くやしいくやしいと喚き散らす。
華奢な体が密着して、いい匂いもするし、小さな胸が完全にあたっている……けど、ちっとも嬉しくない。
いいか、みんな。これが『学園の至宝』の正体だ。
すぐ失敗する。失敗するとすぐ泣く。泣いたら長文で嘆く。嘆きを聞かないと拗ねる。拗ねるとさらに長文でグズる…
泣きたいのはこっちだよ、本当に。
「……ちょっと助手君! 聞いてるの!? 私がこんなにヘコんでるのに、その虚無を見つめるような目は何!? ひどい!冷たい!助手君まで私を見捨てるのねっ!」
潤んだ瞳で上目遣い。ぐちゃぐちゃの泣き顔。さっきまでの自信はどこにいったんだよ。
「……大丈夫ですよ。また、最初から作り直せばいいじゃないですか。次はオレも、設計図のチェックから付き合いますから」
…しまった。
「……。……本当に? 一緒に、やってくれる?」
急にしおらしくなって、オレのシャツの袖をギュッと掴む。
「……もちろん。助手ですから」
「……。……うん」
……ああ、クソッ。本っ当にチョロいな。…オレ。
(――と、その時。爆発音を聞きつけた先生たちが、血相を変えて理科室に雪崩れ込んできた)
「何事だ! セリカ、またお前か!?」
「助手君……あとは、任せた……」
先輩、ボクの陰に隠れるのやめてもらえますか。
後始末、始末書、そして壊れた装置の撤去……。
あああぁぁぁ! もう!
誰か科学部入ってくれよぉぉぉ! 助手募集中! 精神耐性Sランク必須でぇぇぇ!!
呪文
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