強敵(とも)が嫁になった日! #新婚編へつづく
彼女が差し出してきたのは、甘い愛の言葉じゃなくて、いつでも闘争心に火をつけてくれた、あの不敵な言葉だった。
オレはハルト。長い前髪で両目が隠れた、どこにでもいる典型的なパッとしない平凡な社員……だったはずだ。
隣にいる、人生最大の『強敵(とも)』であり、今日から『嫁』になるマキさんに出会うまでは。
数年前、入社したてのオレを弟みたいにからかいながら、仕事のイロハを叩き込んでくれたマキさん。
いつしかオレの中に『この人に認められたい』『この人を追い抜きたい』って火がついて、必死で食らいつくうちに、お互いが会社の売上を競い合うトップエースになっていた。
普段はマキさんの尻に敷かれっぱなしなオレだけど、仕事の修羅場だけは『やるときはやる男』として、彼女の隣に並び立つ資格を得るために死に物狂いで走ってきたんだ。
そして今日、女の子として一番可愛く、おしとやかにしているはずの結婚式。
ドレス姿のマキさんは言葉を失うほど綺麗で、振り返ってオレを誘うその一瞬、ほんのり赤くなった頬がたまらなく愛おしい。だけど、その目にはやっぱり、オレをワクワクさせる『相棒』としての強い輝きが宿っている。
普通なら『幸せのゴールイン』って感動の涙に包まれる場面なのかもしれない。
だけど、オレたちの胸にあるのは、達成感じゃなかった。
『……ふっ、当たり前ですよ。マキさんの隣を歩くために、オレがどれだけ背伸びしてきたと思ってるんですか』
差し出された彼女の柔らかい、でも共に戦ってきた信頼の詰まった手を、ギュッと力強く握り返した。
「あら、言うようになったじゃない。……じゃあ、これからの人生っていう新しいプロジェクトも、どっちがより相手を幸せにできるか、徹底的に勝負ね?」
『望むところです。絶対に負けませんから』
神父様の前へ一歩を踏み出す。
この先、どんな困難や大きな壁が立ち塞がったとしても、オレたちならお互いを高め合って、どこまでも成長していける。そんな確信に満ちた、新たな始まりの予感。
これにて、オレたちの『ライバル同僚編』は最高の形で第一部完結。
明日からは、もっと甘くて、もっと熱い、負けられない戦いが詰まった『第二部・新婚編』のスタートだ!
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