サンタな同級生💕
「み、翠川さん……?何やってるの、こんなところで!?」
来年に受験を控えた12月の夜、塾帰りの僕はサンタ服に身を包んだ同級生に遭遇した。
時刻は夜の23時。
アルバイトにしてはあまりに遅すぎる。
「ひ……人違いじゃないかな?」
「何言ってんの。同じクラスじゃないか」
眼鏡こそかけていないが、間違いない。
いつも教室の隅っこで本を読み。
昼休みは何処かに消えて。
いつもミステリアスで物静かな……
そんな君を、僕はずっと……
ずっと……
「参ったな。なるべくいつも目立たないようにしていたんだけど」
こちらの目線に気付いて、翠川さんは案外あっさりと認めてしまった。
「何やってるの?」
「見ての通り、サンタさ」
「こんな遅くまでアルバイト?」
「ちょっと違う。"本物"のほう」
本物って……ええ?
「厳密には"本物の代行"かな。身寄りの無い子供がいる施設に、クリスマスの夜にプレゼントを贈る秘密組織があって、そこのエージェントを務めてるの。全サ連……全日本サンタ連盟って言うんだけど」
へ、へえ、ありがとう。
でも秘密なのにそんなに詳しく話しちゃって良かったの……?
「しまった!!」
おいっ!
「どうしよう、このままじゃ消されちゃう」
全サ連、怖えな!
「お願い、誰にも言わないで!」
「大丈夫……言わないよ」
寧ろ翠川さんと秘密を共有出来た事が嬉しいというか、何というか。
「ありがとう。お礼の代わりじゃないけど、この後君の家に行くね。ご両親が旅行中で今夜は一人なんでしょ?」
「うおっ、何で知ってるの!?」
「独自の情報網があるの」
全サ連、マジ怖えな!!!
※ ※ ※ ※
それでもって、一夜明けた後日。
「お疲れ様。お昼ご飯、一緒に食べようか?静かで良いところがあるの」
何時もの眼鏡に制服姿の翠川さんが、昼休みに声をかけてきた。教室の周囲から一瞬視線が集まるが、まあ、いいか……
「何で誘ってくれたの?」
「監視のためよ。それに私……」
そこまで言いかけて「何でもない」とスタスタ歩きだしてしまった。コレってどういう関係なんだろう。
昨晩既に一線は越えてしまったわけだけど
卒業までにちゃんと気持ちを伝えようと思う。
第3話はこちら
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