魔界戦記ディスガイア ラハール ゴブリン
魔界の荒野、不気味に赤く染まった月明かりの下で、魔王ラハールは苛立ちを隠そうともせずに地団駄を踏んでいました。
「ふざけるな! なぜ俺様がこんなふざけた格好をしなければならんのだ!!」
ラハールの身に纏われているのは、魔界の傲慢な魔王の鎧ではなく、清楚で可憐な天使フロンの装束でした。サイズが合わず、裾を引きずり、フリルがひらひらと風に揺れるたびに、ラハールの顔は怒りで真っ赤に染まります。
「フロン! お前、あとでただじゃおかねえぞ! 『魔王たるもの、時には優しき慈愛の精神を学ぶべし』だと? 殺す、今すぐ殺してやる!」
事の発端は、フロンによる「愛の教育」と称した悪質なイタズラでした。フロンが洗濯して干していた服を、寝ているラハールに無理やり着せたのです。
ゴブリンの群れ、襲来
そこへ、騒ぎを聞きつけたのか、近隣の湿地帯から十数匹のゴブリンが姿を現しました。魔界のゴブリンたちは、フリルまみれの「天使のような何か」を見て、ゲラゲラと下卑た笑い声を上げました。
「ギャハハ! なんだこのチビ天使は! 美味そうだな!」
「今日はいい獲物だ! 食っちまおうぜ!」
ラハールはゆっくりと顔を上げました。その瞳には、すでに底知れぬ殺意が渦巻いています。
「……誰がチビだ。……誰が獲物だ、このウジ虫どもが」
ラハールが手をかざすと、愛用の魔剣がその場に出現しました。フリルの袖から覗く鋭利な剣先が、月の光を冷たく反射します。
「俺様をこんなふざけた格好にしておいて、その上俺様を食おうだと? ……貴様ら、地獄の業火で灰になりたいか!!」
圧倒的な蹂躙
ラハールは地を蹴りました。フリルの上着を翻しながら、その姿は一瞬にして残像へと変わります。
「死ね! 死ね! 死ねーーっ!!」
『魔王奥義・絶招大車輪』!
天使の衣装に身を包んだ魔王が、回転しながら凄まじい旋風となってゴブリンの群れを薙ぎ払いました。天使のような慈悲の心など欠片もありません。あるのは絶対的な暴力のみです。
一瞬にして、戦場は静寂に包まれました。ゴブリンたちは一撃も食らわせることなく、跡形もなく消滅しました。
幕引き
返り血を浴びたフリルの服を乱暴に払いながら、ラハールは荒い息をつきました。
「……ふん、所詮は下級のゴミどもか」
しかし、ふと自分の姿を俯瞰した瞬間、再び怒りが再燃します。
「……あーもう!! 汚れた! 俺様の……いや、このふざけた服が汚れた! これでまたフロンに余計なことを言われるのは目に見えている!」
ラハールは空を見上げ、魔界の城に向かって叫びました。
「エトナ! プリニー! すぐに予備の服を持ってこい! 今すぐだ! さもなくばお前たちの給料を今後百年分ゼロにしてやる!!」
魔王の怒声が魔界の夜空に響き渡る中、ラハールはフリルの服の裾を思い切り引きちぎり、不機嫌そうに城へと戻っていきました。その背中は、どんな武具よりも禍々しい殺気を放っていました。
呪文
入力なし