雪原の小さな師匠
雪深い北国の露天風呂。雛鶴あいは、並々と注がれたお湯に浸かりながら、真っ赤な顔で声を上げた。目の前では、赤い帽子をちょこんと乗せた小さな雪だるまが、あいの動きに合わせてお湯の上をぷかぷかと揺れていた。
「ねえ、お師匠様! 見てください、この雪だるま. 私の代わりにのぼせそうですよ?」
湯船の縁に置かれたタオルを頭に乗せ、あいはクスクスと笑った。立ち上る白い蒸気の向こう、黙ってお湯に浸かる相手の沈黙に気づくと、彼女はリスのようにぷくーっと頬を膨らませた。
「もうっ、お師匠様ったら。もしかして、雪景色に見とれて私の話を聞いてないんですか? 私、一生懸命、今日指した将棋の反省をしてたのに……」
あいは自分でお湯を掬い、肩にかけた。時折、空から舞い落ちる雪の結晶が肌に触れては消えていく。外気は凍えるほどだが、お湯のおかげで体は芯からぽかぽかだ。
「あ、そうだ! お師匠様、次は雪の上で将棋を指しませんか? 負けた方が雪だるまの鼻になるっていうルールで!」
突拍子もない提案に、自分でもおかしくなったのか、あいは「えへへ」と楽しそうに笑う。
「冗談ですよ。でも、こうしてゆっくりするのは最高ですね。明日からの対局、私、絶対負けませんから!」
湯気に包まれて真っ赤になった頬と、雪原に響く天真爛漫な笑い声。その温かさは、北国の厳しい寒さを一瞬で溶かしてしまうようだった。
呪文
入力なし