Humanoid Blood Drive
そのノーマは突然現れた
「フェンテスのみなさーん、注目!今日は私のトモダチを紹介するね!」
不意をついたはずのノーマだったが、攻撃する様子はない
それどころか友達を紹介などと訳の分からないことを言っている。
兵は警戒しつつも、頭のおかしい奴が来たといわんばかりに嘲笑う。
「相手は一人だ、さっさと片づけてしまえ」
フェンテスの兵が銃を構える
同胞たちに向けて
あろうことかそのノーマは、鹵獲したフェンテスの兵を"トモダチ"と称し
「なかよし部」と呼ばれる軍を編成していた
かつての同胞たちに銃を向けることができす、壊滅するまでに時間はかからなかった
かろうじて一命をとりとめたフェンテス兵のひとり、アーサーは近くの倉庫に逃げ込んでいた。
傍らにいるのは基地の事務官であるシェリー、アーサーの恋人でもある。
「シェリー、もう大丈夫だ。じきに救援が来るだろう」
「ありがとうアーサー
…でも、私はあなたと一緒には行けないわ」
「そんな…どうして」
「私はセントレイク第2諜報部隊のイザベラ、シェリーは偽名よ
フェンテスに侵入、上層部の意向を探るのが私の仕事…だったの」
「けどちょっとヘマしちゃってね
今頃セントレイクが私の身体に埋め込んだ"保険"が体中を蝕んでいるはずよ
どうせ死ぬのよ、ただそれが早まっただけ。」
「あなたみたいな誠実な人に看取られるのだから、スパイとしてはこれ以上ない最期よ」
「私の故郷、エリューシアっていうんだけどね"楽園"って意味なの
私が死んだ後、楽園に行けるよう祈って貰えると助かるわ…」
「君を死なせはしない、なんとかしてみせる」
「ふふ、あなたは本当に優しいのね
騙されていたというのに、まだ心配してくれるのね」
「でもごめんなさい…そろそろ疲れてき…」
「そんな…そんな…!」
シェリーはそのまま意識を失った
アーサーのHAドライヴから伸びるケーブルが蠢く
ーフェンテスが開発した、水からエネルギーを造り出す「HAドライヴ」
古来より同様の技術が存在したと遺跡には記されている
水分が大半を占める"ヒト"は、そのエネルギーの源として重宝され
現代でもフェンテス各企業がこぞって実験と研究を繰り返してきた
"ヒト"の生み出す水をHAドライヴの装置として利用できないか、と。
度重なる人体実験が引き起こすのは民衆の反発、すぐに開発は打ち切られ
各施設は閉鎖、研究データから試作機まで、全て破棄された。
"ただ一機を残して"
HBドライヴ-Humanoid Blood Drive-
ヒトの血を原動力に動く禁忌の機工
アーサーは戦争、世界の声、全てを無視して愛する者の為だけに戦う
※Tea様の 「セントレイク中央首都『エリューシア』」を引用しております
※猫黒夏躯様の 「ヒノイ - フェンテス なかよし部」を引用しております
呪文
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