金欠と採取クエスト -悩めるモリビトの魔術人形研究所(ゴーレムレコード)-
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地下室に、鈍い音が響いた。
がこん――。
鉄と土塊で組み上げられた未完成の
魔術人形(ゴーレム)が、
その場で膝から崩れ落ちる。
胸部の空洞から淡い魔力の残光が抜け、
静かに消えていった。
その様子を見つめながら、メルは小さく息を吐く。
「……また」
わずかに肩を落とす。
だが、落ち込んでいる暇はない。
必要なのは次の試行だ。
作業台に並べた材料を確認する。
鉄片。残りわずか。触媒粉。底が見えている。
魔獣骨粉――空。
メルは立ち上がり、外套を羽織った。
「……買いに行こう」
昼の町は賑わっていた。
荷車が往来し、市場には露店が並ぶ。
いつも地下室にこもるメルにとっては、
それだけで少し落ち着かない。
目当ての触媒屋に入り、必要な品を見て回る。
魔獣骨粉。精錬鉄。魔力伝導液。
どれも必要だ。メルは財布を開く。
……。
銀貨一枚。銅貨が数枚。
「……」
静かに閉じる。もう一度開く。変わらない。
「……」
やはり変わらない。
しばらく固まったあと、メルは無言で店を出た。
そして。
珍しく、彼女はギルドの扉を押し開けた。
昼時の冒険者ギルド。
酒場を兼ねた広い空間は賑やかで、
受付では依頼人が話し込み、
冒険者たちが笑い合っている。
その中をメルは静かに歩く。
ちらり、と何人かが視線を向けた。
「賢者様じゃないか?」
「珍しいな……」
本人は気づかない。
クエストボードの前に立つ。
討伐依頼。護衛依頼。運搬依頼。
そして。
【採取依頼】
煌苔(キラメキゴケ)一定量納品
場所:西山麓の洞窟
報酬:銀貨六枚
「……これ」
ちょうどいい。そう思った瞬間。
「メルー!」
元気な声。
勢いよく背中を叩かれ、メルの肩が少し揺れた。
振り向くと、
栗色の髪を束ねた少女。
軽装の革鎧。腰に剣。
シーゼだった。
「やぁメル!ギルドに来るなんて珍しいね。
一緒にパーティー組まない?」
いつもの挨拶がわりの勧誘だ。
メルは視線を依頼書へ戻しながら答えた。
「……よろしく頼む」
「そっかー残念……って」
シーゼが固まる。数秒後。
「い、今なんて言った⁈」
「……よろしく頼む」
「ほんとに⁈」
「……うん」
「えっ、夢⁈」
「違う」
「熱でもある⁈」
「ない」
「やったぁぁぁぁ!!」
ギルドに響き渡る歓声。
周囲の冒険者たちが一斉に振り向いた。
メルは少しだけ耳を伏せた。
そして二人は町を出た。
石畳を抜け、草原を越え、山麓へ。
シーゼは機嫌よく歩く。
「ついにメルとパーティーかぁ……」
「……一日だけ」
「分かってるって!」
「……でも助かる」
「え?」
「……魔獣が出るかもしれない」
シーゼは胸を張る。
「任せて!」
洞窟の入口はひんやりとしていた。
岩肌の奥。淡い青緑の光がちらちら揺れている。
「きれー……」
シーゼが息をのむ。
壁一面に、煌苔が生えていた。
夜空の星を閉じ込めたような光。
幻想的な青。
メルは目を細める。
「……質がいい」
袋を取り出すと、さっそく採取開始する。
そのとき、洞窟の奥で。
ガサリ。低いうなり声。
シーゼが即座に剣へ手を伸ばす。
メルも立ち上がる。
青白い煌苔の光の中。暗闇の奥で、何かが動いた。
呪文
入力なし