寝起きの猛ダッシュ
運転席の姉の美紀がアクセルを踏み込む。
「ちょっと待って、お姉ちゃん! まだシャツも羽織っただけだし、ボタンも留まってないの!」
車の激しい揺れに合わせて、莉央のピンク色の髪がピョンピョンとせわしなく跳ねる。
「自業自得でしょ。あんたがギリギリまで寝てるからよ」
「だって、目覚まし時計が仕事しなかったんだもん!」
慌ててボタンを留めようとするが、指先が震えてちっともボタン穴に入らない。おまけに髪の毛は寝癖で爆発したままだ。
バックミラーで後部座席を見た美紀は、思わず吹き出した。
「ちょっと、莉央。シャツの前の合わせ、完全に全開じゃない。おまけに髪型、ハリネズミみたいになってるわよ」
「笑いごとじゃないってば! このままだと、お目当てのケーキ屋さんに並ぶ前に、不審者として捕まっちゃう!」
真っ赤になりながら、莉央は必死に身を縮めた。
「安心しなさい。車内はプライベート空間だから。ほら、櫛とヘアピン、助手席のバッグに入ってるから使いな」
「ありがとう! でも、まずはこのボタンをなんとかしなきゃ……ひゃっ、車が揺れるー!」
呪文
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