雪嶺の邂逅
「はぁ……生き返る」
誰もいないと思っていた静寂は、軽薄そうな誰かの声に破られた。
「おっと、これは失礼。雪見酒ならぬ、雪見美人の入浴シーンに遭遇するとは、今日はなんてツイているんだ!」
智代は表情一つ変えず、お湯をばしゃりと相手の方へすくった。
「誰だ、女性風呂を覗こうなんて度胸があるのは」
「おっと! 攻撃的だね。ただの通りすがりの巡回さ。……にしても、君、本当に強そうだな。その目つき、何人か投げ飛ばしてそうな鋭さだよ」
智代は呆れたようにため息をついた。
「投げ飛ばす趣味はない。ただ、無礼な輩を雪ダルマに変える術なら心得ている。さっさと立ち去らないと、この雪原の一部にしてやろうか?」
「ははは、強気だな! だが、そこがいい。冷たい雪と熱い湯のコントラスト。まさに今の君にぴったりだ」
「……言いたいだけか。もう一度言う、消えろ」
「はいはい、退散するよ。いやあ、良いものを見させてもらった」
足音が遠ざかると、智代は再び静寂に身を委ねた。
「全く、とんでもない輩もいたものだ……」
「やれやれ」と小さく苦笑し、智代は湯の熱さを楽しむように肩まで潜り込んだ。凍てつく空を見上げながら、自分でも分かるほど頬が熱くなっているのを感じていた。
呪文
入力なし