夕ごろ寝 -Everyday Ayanagiso- アヤナギ荘の日常 #64
橙色の光がアヤナギ荘の和室へ差し込んでいた。
「……あぢぃ」
クロキは畳の上へ大の字になり、
ごろりと寝返りを打つ。
「エアコンまで行くのもめんどくせぇ……」
そう呟いては、またごろん。
縁側から吹き込む風だけが、
黒い髪をゆっくり揺らしていく。
「このまま床と一体化できねぇかな……」
猫のように丸くなったかと思えば、今度は仰向け。
畳の感触が妙に心地よく、
何もしない贅沢を満喫していた。
その頃。
「クロの字ー!」
「クロの字殿ー!」
廊下では、美鳥が部屋という部屋を覗き込んでいた。
「むぅ……留守ではあるまい?」
ぐぅぅぅ……
静かな廊下に、自分のお腹の音が響く。
「空腹とは、
これほどまで判断力を鈍らせるものなのか……」
冷蔵庫を開けても、そこにあるのは食材ばかり。
「材料はある。だが料理人がいない!」
拳を握りしめ、美鳥は再び捜索を開始する。
そして数分後。
和室の襖が、すっと開いた。
「いたぁ!」
「……うぉ」
畳の上で転がっていたクロキが、
のそのそ顔だけ起こす。
「こんなとこで猫みてぇに転がっとったか」
「……なんか用?」
美鳥は満面の笑みで親指を立てた。
「腹が減った! 晩御飯を作ってくれ!」
数秒の沈黙。
「……結局それかよ」
クロキは小さく笑いながら立ち上がる。
「しゃーねぇな…」
「待ってました!」
夕暮れ色の和室を後にし、
二人は並んで台所へ向かうのだった。
呪文
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