秘密の線香花火 #花火大会のあと
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主催者様に大感謝です!
──『あっ……。ごめんね、こんな夜遅くに、急に呼び出しちゃって』
暗い川辺の遊歩道、街灯の光に背を向けて歩いてくる彼の姿を見つけて、わたしはホッと胸をなでおろした。
わたしの名前はユリカ。
学校では『容姿端麗、成績優秀で多くを語らないミステリアス美女』なんて呼ばれているらしいけれど、本当のわたしは、ただの極度の口下手で、人一倍の照れ屋なだけの、どこにでもいる普通の女の子。
感情を言葉にするのが人より少し苦手なせいで、いつも周りに誤解されてしまう自分が、少しだけもどかしくて苛立たしかった。
そんなわたしを、特別扱いせずに『普通の女の子』として優しく、対等に扱ってくれるタカシくんのことが、わたしは心の底から大切で、大好き。
だからこそ、数日前に彼から『今度の花火大会、オレと一緒にいこ!』って誘われたとき、心臓が爆発しそうなくらい嬉しかったのに……。
いざ言葉を発しようとしたら、緊張のあまり『……その日は、友達と行く約束があるから』なんて、冷たく突き放すような嘘をついて断ってしまった。
嘘じゃない。確かに友達との約束はあったけれど、本当はいつだって、彼の隣に一番いたかった。
お祭りの間中、友達と大きな打ち上げ花火を見上げながらも、わたしの頭の中はタカシくんのことでいっぱいで、全然集中できなくて。
このまま、タカシくんに嫌われたまま夏が終わっちゃうなんて、絶対に嫌だ……!
そう思ったら、お祭りが終わったあとに気付けばスマホを握りしめて、彼に『今から川辺にきてほしい』ってメッセージを送っていた。
彼なら、きっと来てくれるって信じて。
「……ユリカ、急にどうしたんだ? 友達と花火、楽しかったか?」
少し息を切らせながら、いつものように前髪の隙間から優しい声をかけてくれるタカシくん。
彼のその声を聞いた瞬間、胸の奥のモヤモヤがすうっと消えていく。
『……うん。楽しかった。……でもね、花火は綺麗だったけど、タカシくんが隣にいなかったから、なんだかすごく寂しかったの』
口下手なわたしにしては、びっくりするくらいのストレートな本音。
驚いたように目を見張る彼の前で、わたしは買ってきたばかりの小さな花火のセットから、一本の線香花火を取り出して火をつけた。
チリチリと静かに音を立てて、闇の中に小さなオレンジ色の火花が咲き始める。
大きな打ち上げ花火みたいな派手さはないけれど、この小さな光の半径数センチメートルの中だけは、わたしたち二人だけの、誰にも邪魔されない特別な空間。
『タカシくん、お祭り断っちゃって、本当にごめんなさい。……だから、今から二人だけで、わたしたちの夏祭りを始めさせてほしいな』
線香花火のパチパチという小さな光に照らされて、赤くなっているのがバレちゃいそうだけど、わたしは逃げずにタカシくんの瞳をまっすぐに見つめた。
「……ずるいな、怒れるわけないだろ」
少し照れくさそうに笑って、わたしの隣にしゃがみ込んでくれるタカシくん。
不器用で、言葉足らずで、いつも遠回りばかりしちゃう恋だけど、もう一瞬だって彼の隣を離れたくない。
儚くて温かい線香花火が二人を照らす。
わたしは夜風に吹かれる浴衣の袖を静かにぎゅっと握りしめた。
呪文
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