五百年目のノスタルジア #満月と蛍と雪女
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主催者様に大感謝です!
『綺麗……。
ああ、今のわたしは人間みたいなことを考えているな……』
わたしはユキ。この国に脈々と受け継がれる雪女の血を引く、人ならざる存在。
そう、ただの妖怪だ。
だけど、わたしがこの地で人間たちと共生を始めてから、もう500年以上もの歳月が流れてしまった。
かつて戦国と呼ばれた時代や、世界の形が大きく変わる歴史の転換点。
わたしは幾度となく、短くも懸命に生きる人間たちと手を組み、彼らのためにこの冷たい妖力を使って共闘してきた。
ただの利害の一致だったはずなのに、彼らの隣で長い季節を重ねるうちに、わたしは知らず知らずのうちに人間の考え方、その繊細な心の機微を学び取ってしまっていたらしい。
昔のわたしにとって、夜空の月はただの夜道を照らす光源であり、闇に舞う蛍の光も、ただの虫が放つ微弱な熱に過ぎなかった。
それなのに……今、わたしの周りを淡い緑色に染めながら優雅に舞う蛍の群れを見て、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じている。
ただ冷たく、ただ静かに流れる時間に、人間たちは『風情』や『切なさ』という名の美しい彩りを与えていた。
その視線を、今ではわたしも同じように共有している。
「……ユキ、どうしたの? そんなにじっと月を見上げて。まるで、どこか遠くへ行っちゃいそうな顔をしてる」
『……なんでもないわ。ただ、今日の満月は、いつもより少しだけ……優しく見える気がしたのよ』
人間たちと過ごした500年は、わたしの冷徹だった妖の心を、少しずつ、だけど確かに融かしていった。
『随分と人間に染まってしまったものだ』と、胸の奥で自嘲するような冷淡な呟きが聞こえるけれど。
でも、そうやって季節の移ろいを美しいと震える今の自分を、わたしは決して嫌いじゃない。
むしろ、このまま彼らと同じ景色を見続けられるのなら、それも悪くはないとすら思っている。
振り返ったわたしの唇に、自分でも驚くほどわずかな、だけど確かな慈しみの微笑みが浮かんでいた。
刹那を生きる愛しい人間たちよ。
あなたたちが紡ぐ美しい世界を、わたしはこれからも、この瞳に焼き付け、共に歩んでいくのでしょう――。
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