囀る小鳥たちの鎮魂歌
少女がそう独り言ちながら空を飛ぶ。
何かに乗るでもなく、羽ばたくでもなく、直進する。
それは、少女のノーマとしての異能力<ソングバード>による飛行能力であった。
少女の目的は、現在ヒノイが敵対国として侵略を開始しているフェンテスの技術解析のための、敵性戦力の鹵獲であった。
その中でも、完全なロボットではなく、機械化した人間がターゲットとなる。
「警告する。そちらは我がフェンテスの領空に侵入している。即刻進路を変えなければ迎撃する」
早速引っかかった。敵は白いアンドロイド型のが一機のようだ。右手には剣と銃が一体化したかのような武器を携えている。
この時間のこのエリアなら数が少ないという情報は確かだったようだ。
援軍が到着する前に片をつける
少女は軌道を変えて、敵機の頭上に向けて直進する。
「くっ、聞く耳もたずですか。撃ち落とします」
敵機が右手の武器をこちらに向けて引き金を引く。
銃口からビームの粒子が空を裂く。
少女は敵の挙動にあわせて、回避機動を取りながら、敵機に向かって銃を撃ちながら突撃する。
<ソングバード>はただの飛行能力ではなく、重力操作による飛行を実現する能力だ。
また、頭上から放たれるその弾丸も重力操作の影響で、着弾時の衝撃力はただの拳銃の比ではない。
しかし、フェンテスのアンドロイドの装甲は厚く、銃弾は捉えているものの目だった損傷を与えられていないようだ。
「そんなもので!」
敵機の構えが変化する。武器を両手で持ち、剣のような構えをとる。
少女と敵機の距離が近づき、交錯する瞬間、光が煌めいた。
少女を襲う焼けるような熱さと喪失感。
交錯の刹那、銃を持っていた方の腕が切り落とされたようだ。
しかし、彼女は敵機の背後に取りつくことに成功した。
「ぐぁ・・・、これで、終わりよ!」
少女が背中に取りつくと同時に<ソングバード>の重力負荷を最大限まで大きくする。
一人の少女とアンドロイドは互いに空を墜ちていく。
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「以上が今回の交戦の記録となります、ドクター」
ドクターと告げた少女の姿は異様そのものだった。幾重にも取り付けられた血管のようなインプラントが身体を覆い、頭部には別の生き物の頭部が融合しているような姿をしていた。
「ありがとう、ゼロ。121の調子はどう?」
「幸い、負傷した腕は焼き切られたようなので、失血死にいたることはありませんでしたが、テロメアの方が限界に近づいています」
「・・・そうか。わかった」
「ドクター。一ついいでしょうか」
「なんだい?ゼロ」
「あの声が言っていた、敵って本当にフェンテスなんでしょうか?」
「どうだろうねぇ。私からしたら、今回の出来事はすべてチャンスだと思っている。この行き詰まった現状を打破するための」
「私も、いつかみんなのように空を飛べるでしょうか・・・?」
「・・・ああ、諦めなければ可能性はあるはずさ。さ、早速121が捕まえてきてくれた獲物を解析しよう」
呪文
入力なし