黄金色の温泉紀行
伊地知虹夏は思わず声を上げた。見渡す限りの見知らぬ場所。遠くに見える険しい山の頂には、冷たい空気を纏ったあれが降り積もっている。それでも、今、彼女の身体を包んでいるのは、芯まで温めてくれる心地よい熱だ。
「あーもう! ついつい声が出ちゃうね。誰かに聞かれてないよね? ……まあ、誰もいないから大丈夫か。えへへ」
彼女は独り言を呟きながら、桶に手をかけてゆらりと身体を沈めた。揺れるお湯の波紋が、彼女の金色の髪を優しく撫でる。
「ライブのあとの疲れも、全部どこかに消えていくみたい。バンドのメンバーのみんなにも教えたいけど、ここだけの内緒かな。ひとりでこんな贅沢しちゃって、ちょっとだけ背徳感かも」
虹夏は小さく笑うと、空を見上げた。刺すような冷気と、肌を焼くような湯の熱。その対比が、彼女に不思議な感覚をもたらす。
「よし、そろそろ出ようかな。あったまったー! さて、次は美味しいもの探しに行かなくちゃ。あー、もう本当に最高だ!」
彼女は満足げに瞳を細め、静かなひとときを噛みしめていた。
呪文
入力なし