対白鯨戦「ホエールウォッチング&クジラ狩り」
雷雲にまかれた巨大戦艦。出港式を行っているにもかかわらず、空気の読めない天気にイライラする藤原ミヤ子。
クジラ狩りのために戦艦を理不尽召喚した少女だ。
「・・・きょうはみなさんにクジラ狩りをしてもらおうと思います」
”ホエールウォッチングに行く”と聞かされて集ったクラスメイト達が一斉にツッコんだ。
「ちょっちょっちょっとミヤ子!ホエールウォッチングってきいてるんですけど!! あと目、めっちゃこわいんですけど!」
ぎゃーぎゃー騒ぎながらの出航。
彼女が何をどう言って人を集めたのかはこの際問う事はしないでおこう・・・。
しゅっこーだー(棒読み
#2
「ふおおおおっすごいっ」
「マジでマジでマジデ!?!?!? 写メ!写メ撮ろっ!!」
甲板の上は大騒ぎ。
フェンテスの艤装戦艦とは言えクジラが空を飛んでいるのだ。
その光景は圧巻の一言に尽きる。
遠目に主砲が何度か火を噴いていたが、それすら彼女たちにとっては興奮のスパイスにしかなっていない。
「いやーー、ほんま見に来れてよかった!」
「だよねだよねーーーっ! みやっちありがとーー!」
そんな歓声にミヤ子は うんうん と頷いている。
暫くの間、遠くからのホエールウォッチングを十分に楽しんだ後・・・
ミヤ子はぽつりとつぶやいた。
「・・・じゃあ、いこーか」
「・・・? みやたん?」
ごうん、と戦艦が回頭する。
空を飛ぶ理不尽な戦艦ではあるが、そういえばこれはミヤ子が呼び出したものだった事を、クラスメイトはいまさらながら思い出した。
「そろそろ帰るん?」
クラスメイトの心底不思議そうな言葉に、ミヤ子は ふるふる と頭を横に振って指さした。
クジラを。
「クジラ狩りの、はじまりだ」
声なき絶叫が甲板に響いた。
楽しい時間はついにおわったのだったー(ぼうよみ
#3
「いーーーやーーーー! もう、いーーやーーーーー!」
ミヤ子がクジラとの戦いに夢中になっていると、誰かの絶叫が聞こえた気がした。
しかし気にするまい、それはもう既に日常だ。
白鯨との接敵は一瞬だった。
その時からすでに数えで1時間経過しそうである。
交わす砲火、接近と回避を交互に繰り返しながら、空を行く巨大戦艦と白鯨のデッドヒートは続いていた。
直線の加速は戦艦に分があったのだが、空中を自在に泳ぎ回る白鯨の機動力は戦艦を圧倒していた。
既に何度か隙を突かれて白鯨の主砲に晒されたのだが、空間を捻じ曲げる異能で難を凌いでいる。
しかし限界が近いことも全員が感じていた。
「ってか、そもそもなんで戦ってんの! 平和なホエールウォッチングの時間だけでよくない!?
ねえ、私間違ってる!?」
ぎゃんぎゃんと抗議しまくりながらもシッカリと弾幕を張ったり隙を見た高火力の一撃を放ったりしていることをこれまたしっかりとミヤ子は見ていた。
「・・・そこに、クジラがいるから?」
「全クジラに戦いを挑むつもりかっ! 謝って!クジラさんに謝って!! そして私たちにも謝ってよおお!」
空間が歪み、エネルギーの本流が魔法陣の様な文様を形成。発射。
クジラの艤装にぶち当たり、そこそこのダメージを与えていた。
しかしこのままでは時間切れなのは変わらない。
ミヤ子は少しだけ冒険をすることにした。
「そーいん。どこかにつかまってて。
ぶんまわすよーー」
そういうと同時に、眼下の雲海に戦艦を突っ込ませた。
ぎょあーああーあああ とか あぎゃーー とか女子高生にはあるまじき悲鳴が聞こえた気がしたが、気のせいだろう。
激しく複雑な機動の末に、突如雲海が晴れる。
――その、頭上。
白鯨の真下に躍り出た戦艦とクラスメイト、そしてミヤ子は目撃した。
雄々しく、しかし優雅に空を征く、白鯨を。
「・・・きれい、だね」
ふと、口の端に笑みを浮かべたミヤ子は――
「そういん。ぜんりょくこうげき。10秒後にりだつしまーす」
血も涙も、ありはしなかったのだった。
「「「「「この、鬼―――――――!」」」」」
なお、その場にいた全員から顰蹙を買っていたことを、ここに書き添えておくことにする。
呪文
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