錬金術師の部屋
セントレイクの湖のそばに、
ひときわ静かな一軒の家があった。
その小さな屋敷に住む錬金術師は、
セントレイクの平和を回復させるために
回復ポーションの制作依頼を受け、
日々の仕事に忙殺され、もう何日も家を空けていた。
錬金術師の部屋には、主人の帰りを待つ黒い猫がいた。
黒猫は錬金術師にとって忠実な使い魔であり、そして家族であった。
黒猫は錬金術師の帰りを切望していた。
彼らの絆は特別なもので、
そこには言葉を超えた心の通い合いがあった。
黒猫のお腹は鮮度を保つ魔道具によって
おいしい餌と新鮮な水で満たされていたが、
心は不安でいっぱいだった。
錬金術師との出会いから、こんなにも長い間
離れたのは今回が初めてなのである。
一番好きなソファに座って、黒猫は主人の帰りを待っている。
何度も一緒にお昼寝したソファは、黒猫にとって特別な場所だった。
その柔らかなクッションの上で、
黒猫は主人の香りに少しだけの安心を感じていた。
待つ時間は長く感じた。
それは黒猫にとって初めての感覚だった。
───次に主人が帰ってきた時は、
肉球くらいなら触らせてやってもいいかもしれない。
そんなことを考えながら、黒猫は今日もソファの上で、
玄関を見つめながら過ごすのであった。
呪文
入力なし