アリスの大冒険⑫
時計塔の扉が開き、白うさぎとリスが中へ入ってきました。
リス
「アリスちゃん!時計塔、直ったんだね!」
白うさぎ
「アリスさん、時計塔を直してくださって、本当にありがとうございます。これで、この街は元通りですぞ」
けれど、アリスちゃんは床に倒れたゼンマイ女王を見つめていました。
アリス
「でも、女王さまが……!どうしよう……私、可哀想なことしちゃった……」
アリスちゃんの目に、涙がにじみます。
白うさぎは、やさしく首を横に振りました。
白うさぎ
「大丈夫ですぞ」
白うさぎはゼンマイ女王の背中にある、小さなゼンマイに手を添えました。
きりきり。
きりきり。
白うさぎがゼンマイを巻くと、
ゼンマイ女王の指先がぴくりと動きました。
ゼンマイ女王
「……あれ?」
ゼンマイ女王は、ゆっくりと目を開けました。
ゼンマイ女王
「私……動いてる……?」
アリス
「女王さま!」
白うさぎ
「もともと女王さまは、ゼンマイを巻けば動けるお人形なのです。
ただ、時計塔が壊れてからは、鐘の力で勝手に動けるようになっていただけですぞ」
ゼンマイ女王
「じゃあ……時計塔が直っても、私は動けるの?」
白うさぎ
「もちろんです。
これからは、私たちがちゃんとゼンマイを巻きにまいります」
リス
「ぼくも巻くよ!たまにだけど!」
ゼンマイ女王は、ぽかんとした顔でみんなを見ました。
ゼンマイ女王
「私……また、飾り棚に戻されるんじゃないの?」
アリス
「そんなことないよ!」
アリスちゃんは、ゼンマイ女王の手をぎゅっと握りました。
アリス
「女王さまは、もうただのお人形じゃないよ。
この街の、へんてこお茶会の女王さまだよ!」
白うさぎ
「ええ。次のお茶会は、ぜひ女王さまに開いていただきたいですな」
リス
「今度は逃げないお菓子だよ笑」
ゼンマイ女王は、少しだけ頬を赤くしました。
ゼンマイ女王
「……しょうがないわね。
そこまで言うなら、特別に開いてあげてもいいわ」
アリス
「やったぁ!」
時計塔の鐘が、やさしく鳴りました。
ゴーン……ゴーン……
すると、時計塔の中に小さな光の扉が現れました。
白うさぎ
「アリスさん。あれが、元の世界への帰り道です」
アリス
「もう帰る時間なんだね……」
リス
「アリスちゃん……穴に落としてごめんね」
アリス
「もう!すっごくびっくりしたんだからね!」
リス
「でも、楽しかったでしょ?」
アリス
「……ちょっとだけ!」
みんなは笑いました。
白うさぎ、リス、ゼンマイ女王、そして街のみんなが、
アリスちゃんを見送ってくれました。
ゼンマイ女王
「次のお茶会には、ちゃんと招待状を出してあげるわ」
アリス
「うん!また来るね!」
アリスちゃんは光の扉へ一歩ふみ出しました。
まぶしい光に包まれて――
◈┈◇┈◈┈◇┈◈┈◇┈◈
気がつくと、アリスちゃんは、最初に見つけた木の前で眠っていました。
アリス
「……あれ?」
あたりを見まわしても、
不思議な穴はどこにもありません。
アリス
「夢……だったのかな?」
そのときです。
ポケットの中で、ころん、と小さな音がしました。
アリスちゃんがポケットをのぞくと、
そこには、古ぼけた小さな歯車が入っていました。
アリス
「夢じゃ……なかったんだ」
木漏れ日が、歯車をきらりと光らせます。
アリス
「また、行けるといいな♪」
アリスちゃんの小さな大冒険は、
こうしておしまい。
でもまたいつか、
不思議な世界への入口が、どこかで開くかもしれません。
~完~
呪文
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