右から左へ… #入ってこない
オレの名前はレン。どこにでもいる、前髪が少し長めなだけの高校生だ。
オレには姉がいるんだけど…
『ちょっとレン!! どこにいるのよぉぉぉ!! 出てきなさいッ!!』
鼓膜を突き破るような怒号。
リビングへ向かうと、そこには仁王立ちで待ち構える姉、シオリの姿があった。
『アンタ、冷蔵庫にあった私のプリン、勝手に食べたでしょ! 楽しみにしてたのに!』
……正直、説教の内容なんてどうでもいい。
問題は、姉さんのその格好だ。
長袖シャツ。それはいい。でも、その下。
……なんで、パンティ一枚なんだよ。
せめて下着の上に何か穿けよ。
見慣れているとはいえ、目の前で堂々と晒すなって。
『だいたいアンタはいつもそう! こないだのケーキもそうだし、人の楽しみを奪うことに関しては天才的よね。そもそも、人の物を勝手につまみ食いするのは、モラルの欠如っていうか、姉に対する敬意が足りないのよ。いい、レン? 人間っていうのはね……』
ここで姉さんを紹介しておこう。
彼女はシオリ。学校では才色兼備な生徒会役員で、全男子の憧れの的…らしい。
でも家ではこれだ。感情が高ぶると周囲の状況……というか、自分の着衣状況すら忘れる「うっかりさん」を通り越した天然記念物。
今だって、腕組みしてジト目で睨んでいるけど、その腕のせいでシャツが持ち上がって、さらに際どいことになってる。
『……ちょっとレン! 聞いてるの!? さっきから黙っちゃって! 反省してるわけ!?』
「……。……ああ、聞いてるよ。すごく、身に染みてる」
嘘だ。一文字も入ってこない。
だって今、足元をルンバが通り過ぎた拍子に、シャツの裾がふわっとなって……。
本当に気づいてないのか?
自分が今、教育的指導とは真逆の『不謹慎の極み』みたいな格好をしてることに。
『だいたいね、母さんにも言っておくから! アンタのそのルーズな性格は、今のうちに直しておかないと将来……』
さらにヒートアップする説教。
身振り手振りが激しくなるたびに、オレの視線が右往左往。
早く終わらないかな。
……もとい、早く「履き忘れてる」ことに気づかないかな。
…どうやらまだ数分は続きそうだ。トホホ……
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