気象観測・調節衛星プロジェクトチームの決断
二枚目=気象観測・調節衛星プロジェクトマネージャ。
三枚目=寝転ぶモルトぺ。
四枚目=レスランドのロケット発射場と新型ロケット。
五枚目=今回の修復或いは破壊ミッションにモルトぺと共に参加する「医師」。
六枚目=第二段と第三段との接続リングの切り離し。
レスランドの気象観測・調節衛星は、国家ではなく、とある富豪によって計画され、プロジェクトチームにより運用されている。
人間を組み込む事で多くの回路の製造を省略し、地上・衛星間の通信コストを大幅に削減している。組み込んだ人体は奴隷ではなく、自ら志願した魔法使いの複製である。これによって態々プログラムを作る事無く指令書でミッションを命令できるようにしている。
衛星画像の公表の後、需要に応じて宇宙から確認できる各地域の魔物の情報も公開する様になった。プロジェクトチームも、衛星も、皆が一丸となっていると感じていた。軌道が逸れたその日迄は。
「恐らく、気象観測・調節衛星が魔物に見つかったのでしょう。現在観測されている光は、魔物が攻撃に用いる時に発生する光と同一のものです。推測ですが、衛星の溜め込んだエネルギーを狙ったものかと」
気象調節は太陽エネルギーの吸収・放出や、地上からの吸収・地上への放出で行われる。衛星内に溜まったしたエネルギーは周囲に悪影響が出ない弱さで放出しているが、それが却って目印になってしまったのかも知れない。
「衛星は緊急時に補修がし易くなる様に自動的に遷移軌道に移るよう設定されていました。沈黙の理由が、故障である可能性もあります。……併し、魔物に狙われているとなると、衛星の地上への接近はサラトバを危険に晒す事になりかねません」
どうするかと皆が周りを見る。而して最終的に、視線は皆が沈黙するプロジェクトマネージャに向いた。
「最後迄希望を持ちたい。先づ、この衛星の代替になる新型の人工衛星は既に開発が完了している。それに、我々には打上機が一本残っている。汎用ロケット――代替衛星や更に大型の人工衛星の打ち上げを目的としたものだ。この二つを踏まえて、だ。代替衛星と同時に修理の人員とを打ち上げ、現在接近している気象観測・調節衛星を修理、或いは破壊する、と云うのはどうか」
それに反対する者はいなかった。
その翌日、モルトぺの姿は発射台にあった。青空を眺めるモルトぺに、男が近づいていた。
「モルトぺ」
「……ドクタ」
彼れは、今接近しているモルトぺの複製を作った医師その人だった。
「今回のミッション、僕とドクタとで衛星に対処するんでしたよね」
「嗚呼」彼れは頷いた。「今回の打ち上げには私と君とが乗る」
「今回打ち上げの衛星、人体でなく電子回路を用いているんですってね。色々、変っていくんですね」
「然うだね。人も、国も、技術も、世界も」
二人はロケットに乗り込んだ。
打ち上げ、そして燃焼を終えたロケットが切り離されていく。それを報告する通信の間、空は群青から更に黒くなっていく。而して第二段ロケットの燃焼も終了し……「第三段ロケット燃焼終了、待機軌道に到達しました」
此処で二人は代替衛星とは別のルートに入った。二人が静止遷移軌道を遡って来る衛星と搗ち合う迄、残り数時間となっていた。
呪文
入力なし