双鞭のヴァイオレッタ
凍てついた地下都市の最深部、氷の迷宮の中枢。広大な広間の中央で、ヴァイオレッタ・スケーリアは玉座に座していた。彼女のしなやかな指には、黒い革の乗馬鞭が二本、まるで彼女の腕の延長であるかのように握られている。その黄金の瞳は、目の前に鎖で繋がれた挑戦者を睥睨していた。
「愚かな人間よ」ヴァイオレッタの声は、広間の冷気を震わせる。「この『双鞭のヴァイオレッタ』の領域に足を踏み入れ、我の財宝を狙うとは、勇気と呼ぶにはあまりにも無謀な行いだ」
彼女はゆっくりと立ち上がると、両手の鞭を優雅に宙で旋回させた。ヒュッ、ヒュッと空気を切り裂く音が響く。その鞭は、単なる革紐ではない。氷鱗族の秘術によって強化され、触れたもの全てを凍てつかせ、時には魂をも削り取ると言われる魔器だ。
「貴様は、我の迷宮を汚した。その罪は重い。だが、貴様が示した最後の意地は、我の退屈を少しばかり紛らわせてくれた。故に、特別に二つの裁きを与えよう」
ヴァイオレッタは挑発的に笑い、右手の鞭を男の足元にピシッと叩きつけた。氷の破片が飛び散る。 「一つ、この迷宮の最下層にある、永遠に凍りつく牢獄での絶望。そこには貴様の仲間の残骸が眠っている」
そして、左手の鞭をゆっくりと持ち上げ、その先端で男の顎をクイと持ち上げた。 「二つ、その牢獄へと送られる前に、我の甘美な捕食欲を満たすための餌となることだ。貴様のような生きた獲物は、久しぶりでな……」
彼女の顔に、1枚目のイラストのような妖しくも残忍な笑みが浮かび上がる。瞳は獲物を見定めた捕食者のように輝き、喉からは抑えきれない興奮が漏れ出した。
「さあ、双鞭のヴァイオレッタが、貴様に最後の快楽を与えてやろう」
ヴァイオレッタの口が大きく開かれ、鋭い牙と、長くねっとりとした舌が躍り出た。舌の先からは唾液が滴り落ち、彼女の冷酷な美貌の中に潜む、野獣のような本能が露わになる。男は最後の力を振り絞って叫んだが、その声は彼女の愉悦に満ちた笑い声にかき消されていった。
呪文
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