グランゼンのクッキー
精密な金属加工の技術は細工の技に、繊細な火力操作の技術は焼き上げの技に応用され、芸術品と呼べる領域の菓子を多く生み出している。
これは、グランゼンの紋章を象ったアイシングクッキーである。
国家の紋章をそのまま描き移すのではなく、その意匠を生かしつつ、職人それぞれが、自らの創意工夫や祖竜グランゼンに対する解釈を織り交ぜて作っており、絵柄のおおまかな方向性は同じであるが、多様性に富んでいる。
菓子職人にとっては、自らのアイシングクッキーの絵柄を確立することが、一人前になった証でもある。
戦端が開かれるより前には、依頼を受けて、他国の紋章をクッキーに象ることも行われていたが、開戦以降、その製作は国家によって禁じられている。
不良在庫となり果てた他国の紋章入りのクッキーは、菓子職人によって近隣の住民に配られ、「敵国を食う」ことで戦勝を祈願する小さな催しになった。
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