何か用事なの?(SS付き)
レイは、背後の気配には気づかず、目の前のモニターに表示された複雑なデータに見入っている。
長く美しい銀色の髪は、邪魔にならないように緩く一つにまとめられ、白い項が微かにライトを反射していた。
カタカタとキーボードを叩く音だけが静かなオフィスに響く中、背後に立つマスター。
マスターは特に何かをするわけでもなく、ただレイのうなじを、その滑らかな曲線に見入っていた。
ふと、モニターの画面が暗転するとモニタに反射したマスターにようやく気が付きマスターに視線を送る。
「マスター?何かご用でしょうか?」
声はあくまで冷静で、仕事モードだ。しかし、その瞳には、ほんの僅かな疑問の色が宿っている。
「いや、別に。ただ、そこにいただけだ」
マスターは、そう言って軽く手を上げた。
特に深い意味はない、ただの気まぐれだとでも言うように。
レイは、一瞬だけその言葉を訝しんだようだったが、すぐにいつもの冷静さを取り戻し、軽く頷いた。
「そうですか。でしたら、申し訳ありませんが、今は少し集中しておりまして。仕事の邪魔はご容赦いただけますでしょうか?」
そう言って、レイは再びモニターに向き直り、仕事を再開した。
背後に立つマスターに、それ以上構う様子はなかった。
(R15につづく)
呪文
入力なし