本日のランチ
『食彩探訪』11月号特集
「11月15日 やさしさがふんわり広がる──親子煮定食」
文・撮影:田嶋 達郎(グルメ記者)
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ほんのり冷たい風が吹く昼下がり。温かいものが恋しくなる頃、店に入った途端、出汁と卵のやわらかな香りが迎えてくれた。
この日の定食は、ほっと心がほどける親子煮定食。
浅い鉢に盛られた親子煮は、黄金色の卵がふんわりとろりと輝き、鶏肉と玉ねぎがやさしく抱き込まれている。箸を入れると、鶏肉は驚くほどしっとり。玉ねぎは透き通るほどに煮込まれ、出汁の甘みをしっかり含んでいる。
その一口目は、まるで家に帰ってきたような安心感。「あぁ、今日はこれで良かった」と思わせる力がある。
横には湯気の立つ味噌汁。豆腐とわかめが素朴な味わいで、親子煮の余韻をやさしく受け止めてくれる。
ほうれん草のおひたしは爽やかな青みが心地よいアクセント。
そしてたくあんのカリッとした歯ざわりが、白ごはんの甘みをさらに引き立ててくれる。
華やかさより、丁寧さを感じる一膳。
疲れた日にも、嬉しい日にも食べたくなる、そんな“日常のごちそう”だ。
昼の自然光に照らされる湯気を眺めながら、思わず胸の奥があたたかくなる。
──親子煮。やっぱり、これは優しさそのものだ。
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