夜を迎える準備
夜の森は、不気味なほど静かだった。
焚き火の炎だけが頼りなく揺れ、周囲の木々の影を伸ばしては、また引き戻している。
風はない。波の音も遠く、虫の声すらしない。
その静けさの中、ふいに——「ガサ…」という音がした。
焚き火の向こう、暗闇の奥で何かが動いた気がする。
思わず息を止め、耳を澄ます。
けれど、それ以上の音はしなかった。
「……風…? でも…いや……動物だったりして……?」
焚き火の光を頼りに、指南書を手に取る。
ページをめくる指先がわずかに震えていた。
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【サバイバル知識:夜間の獣対策】
・夜は、日中に姿を見せない野生動物たちが活動を始める時間帯である。
小動物であっても、人間の食料や匂いに惹かれて近寄ることがある。
危険を避けるためには、「人間の存在」を知らせることが重要。
1.火と煙による防御(最も有効)
・炎の光と熱、煙の臭いは、多くの動物にとって危険のサイン。
夜間は完全に火を消さず、小さな火種を保つことで継続的な威嚇効果がある。
ただし乾いた草地では延焼に注意。囲炉裏状に石を並べて安全に。
・煙の利用
動物は煙を嫌う。火が使いにくい場所では、湿った葉や草を燃やして煙を多く出す。
2.臭いによる防御
・人間臭・油臭を活かす
人間の汗や焚き火臭を嫌う獣が多い。
あえて煙臭や汗臭を残すのも有効。
廃油や石鹸など、強い人工臭は逆に好奇心を刺激する場合があるため避ける。
動物が嫌う自然の臭い
木酢液、唐辛子、ハッカ油、ニンニク汁などを布や枝に染み込ませ、寝所の周囲に吊るすと効果的。
(特にクマやイノシシに有効)
3.音による防御(鳴子)
・金属音や人声は一時的に動物を遠ざける。
空き缶を糸でつなげて柵状に吊るし、風でカランカランと鳴るようにしておくと、簡易センサー兼威嚇装置になる。
寝る前に周囲に落ち葉や小枝を厚く敷くと、侵入時の足音で気づきやすい。
4.寝場所と配置の工夫
・寝床は風下に作る:獣に匂いが届きにくい。
水場や獣道(踏み跡)から離れること。
背後を岩や木に預けると、接近方向を限定できる。
周囲に小枝や落ち葉を輪状に撒いておくと、侵入時に音がして目覚めやすい。
5.万が一に備えて
・枕元に火打ち石・松明・棒などすぐ手に取れるものを置く。
火を起こす準備を常に整えておくことで、「次の夜」も安全を確保できる。
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「色々方法はあるみたいだけど…火はあるから、とりあえずは安心なのかな…」
「この『鳴子』は凄い良さそうだけど、今は材料も時間もない……」
「もっと簡単な方法は…」
ペラペラとさらに指南書のページをめくる。
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簡易的で効果は薄いが、一つの手段として、「人の臭いによるテリトリーマーキング」がある。
尿には独特のアンモニア臭があり、多くの動物にとって異質で不快なものだ。
寝床の周囲に撒くことで、「ここには捕食者がいる」と知らせる効果が期待できる。
ただし風雨で効果は薄れるため、過信は禁物。焚き火との併用が望ましい。
※注意点:過信は禁物
・クマ・イノシシ・イタチなどの気性の荒い動物には効果が薄いか、逆に好奇心を誘う可能性もある。
・天然の尿は時間が経つと臭いが薄れるため、効果の持続性は低い。
※特に肉食系(ツキノワグマなど)は、臭いに慣れていたり、人の存在自体を恐れないケースもあり。
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「……なるほど、尿を使って“人の匂い”を残すのか……」
ページを見つめたまま小さくつぶやいた。
そして顔を赤らめる。
「……え、これ本当にやるの…?…逆効果になる場合もあるって書いてあるし…これはやらなくてもいいかな…?」
指南書を閉じ、周囲の小枝や枯草を寝床を囲うよう簡易的に配置してまわる。
戻ってくると、焚き火の火が少し弱まっていた。
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【サバイバル知識:夜を越えるための焚き火管理】
・薪の種類を使い分ける
細い枝(焚き付け)は火を起こすため、太めの薪(本薪)は持続させるために使う。
焚き火を安定させるには、「火持ちのよい広葉樹系(ナラ・カシなど)」が理想。
・空気の流れを確保する
炎の下部に酸素が入るように、薪を格子状に組む。密集させすぎると酸欠で火が消える。
・夜を越える分を用意する
一晩中火を保つには、最低でも自分の腕の太さの薪を10本以上確保することが望ましい。
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「太めの薪も何本かあるし……これで、朝までは大丈夫……かな」
焚き火に新しい薪をくべ、炎の勢いが少しずつ戻っていく。
温かい光が、心まで包み込むように広がった。
そのぬくもりの中で、ようやく寝床に倒れこむ。
「…お腹空いたな…。喉も、乾いた…。火は確保出来たけど、結局飲水は確保できない…。」
「もう暗くて行動するのは危険だし、何より疲れてもう動けない…。」
小さく呟いたその声は、夜の風に溶けて消えた。
枕にしているザックに目を向ける。
中には最初に支給された、500mlの水入りペットボトルとカロリーメイト3箱。
「非常食と飲料水は少しならあるけど、これはまだ手を付けちゃダメ…。」
「……明日…明日どうにもならなかったら…コレを飲もう。」
体は疲労で重く、瞼が自然に落ちていく。
最後にもう一度、焚き火の方を振り返る。
炎がゆらりと揺れ、その光が彼女の閉じてゆく瞳の奥で淡く反射した。
「……どうか、無事に朝を迎えれますように…。」
やがて静寂の中、疲れから深い眠りに落ち、彼女の長い一日がようやく幕を下ろした。
今回のおまけは、忍ルマの室井ちゃんと、没にしたシーンの切り抜きです!
没シーンが気になる方は、私のR-18ページをチェックしてみてね!!※直リンクは控えさせて頂きます
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