天使の戯れ
そんな子供時代。15歳になった私は、久しぶりに花園へ訪れた。ああ、やっぱり天使はいないんだ。ちょっぴりさみしかった。
そのときだ。ふわりと白い羽が舞い落ちてきた。私がその羽を手に取れば、ふわっと金髪の美しい天使が現れる。驚いた私の前に、天使は悲しそうに微笑んだ。
「私のこと、忘れちゃったのかと思っていた」
は、と私は瞬く。
忘れてなんかいない。いつも、心の奥のほうであなたのことを想っていた。大好きなお伽噺をいつまでも大切にしているように、私はあなたのことを大切にしていた。
言葉がでなくて黙り込む私に、天使が手を伸ばす。そして、にこ、と微笑んだ。
天使は私に、花びらが唇を撫ぜるような口づけを落とす。
「私のこと、忘れないでね」
そう言って天使は消えてしまった。
それが私の大切な思い出。80歳になった今でも、ずっとずっと、あの天使のことを想っている。
呪文
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