物語が動き出す山岳メトロポリス/スマホ壁紙アーカイブ
書斎の机に積み上げられた原稿用紙の端が、ふいに微かに震えた。
まるで風が吹いたようだったが、窓は閉まっている。
ペンを置いて顔を上げると、部屋の奥──いつも壁があるはずの場所に、
螺旋状の大鉄路が広がっていた。赤い列車が静かにカーブを曲がり、
アーチ橋の影が床のカーペットに淡く落ちる。
さっきまで単なる想像だった街並みが、色を帯び、匂いを持ち、
ほんとうの「世界」として息を始めている。
この山岳メトロポリスは、どうやら作者が筆を休めた一瞬のすきに、
自ら続きを書き始めてしまったらしい。
遠くのトンネルの奥で、もうひとつ列車の汽笛が鳴った。
それは「物語はここからだ」と告げる合図のようにも聞こえた。
ゆっくり立ち上がり、机に残した未完成の原稿を見る。
今や、それはただの設計図。物語は、もう自分なしでも進んでいく。
螺旋レールの先で、都市が微かに輝いた。
呪文
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