制御不能な力〜No Limit
トランキーロ騎士団に入団(仮)を果たしたウィステリアに、グロリアは語り始めた。
「簡単に言うと、時を止める魔法」
簡単に言う割には、あまりに反則級の能力だった。
「その代償として、時を止めれば止めるほど、その分俺の命の時間は減っていく。あと何分何秒生きられるかは、死ぬまで分からない」
「じゃあ、明日に死ぬかも…?」
「そうだよ」
ハイリスクハイリターン、まさに制御不能な力の正体を知って、ウィステリアは狼狽えた。失踪する前の彼にそんな力は無く、あくまで優秀な風魔法使いであり、高速で回転し相手を斬りつける「スターダストスラッシュ」の鮮やかさに、国民は釘付けになっていた。
「あの頃の俺はさ、焦ってたんだよ」
確かに聖剣騎士に3度挑戦し、3度の敗北を喫したあの時から、世間の目は厳しいものになっていた。その屈辱を覆すかのような今回の勝利に、王国騎士の新時代を感じたのは、ウィステリアだけではなかったはずだ。
「これから先は何が起きようが、まさにデスティーノ、運命だからさ」
焦っても仕方ないよという彼の背中には、死への恐怖など微塵にも感じられなかった。
呪文
入力なし