犬ぞりとアザラシの毛皮のコート
(アザラシ以外にもアシカ・セイウチ・オットセイなど海生哺乳類を用いたコートも同等です)
シールスキンと呼ばれる下地は極めて強力な耐水性を持ち、毛皮による撥水性と相まって酷寒地に暮らす先住民の営みを数千年にわたって守り続けました。
そんな圧倒的な防寒性能に目を付けたのが、ノルウェーの北極探検家アムンゼンでした。
「科学はあらゆる先人の知恵を凌駕するのだァ!!」と言うノリで航海に乗り出し、ことごとく返り討ちに遭って多数の遭難者を出し続けた北極探検。
彼は北極探検の偉大なる先輩(3年間北極に留まり続けて全員生還。この偉業も今度紹介したいですネ)ナンセンのアドバイスを受けて装備を徹底的にカスタマイズ。
その改修ベースに選んだのが先住民イヌイットのシールスキンと犬ぞりでした。
「うわぁ古臭い装備」だの「犬とかショボっ馬より輸送力ヘボいじゃん」だの散々学会から批判されながらも、アムンゼンは恩師ナンセンから探検船フラム号(先の3年間の北極探検を経ても殆ど無傷)を譲り受け、選抜メンバーと共に出発したのでした―――――南極へ。
何故なら、北極点は既にアメリカの探検家ピアリが制覇していたから。
(なおピアリの北極点到達は現在ではかなーり疑問視されてるとか…)
道中は悪天候に見舞われながらも、綿密にカスタマイズした装備がジャストフィット。
特に犬ぞりは雪山の登坂などにとても良好な性能を発揮したようです。
「コイツらにここまでのポテンシャルがあったのか!」とアムンゼン自身も驚いたとか。
人類最古のパートナーは伊達じゃありません。
アムンゼン隊は南極点の到達に人類史上初めて成功、恩師ナンセン同様一人の遭難者も出すことなく無事帰還します。
各国首脳が英雄アムンゼン一行を祝福する中、科学は世界一ィィ主義を掲げていた王立地理学会はアムンゼンが伝統的装備をベースにした探検法を用いて大成功を収めたことに相当グギギしていたとか。
そんなアムンゼンが帰還途上で聞いたのは、同タイミングで南極探検に挑んだ(道中では一緒に食事会も開催した)イギリスのスコット隊の全滅という悲劇でした。
スコット隊は英国海軍の全面協力でモーター駆動車を筆頭に科学の粋を結集した合理的装備で固めていましたが、ことごとく裏目に出てしまったのです。
アムンゼンはその後も極地探索に人生を捧げました。
1928年北極で遭難した飛行船の救出に小型飛行機で赴き、そのまま行方不明になります。
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