夜、花咲くカウンター
「今日のカクテル、ちょっと攻めすぎじゃない?」
白髪の彼女が、グラスを傾けながら言う。
その声は低く、笑みは艶やか。
赤髪の彼女は、カウンター越しにウィンクを返す。
「先輩のビールの注ぎ方こそ、誘惑の塊ですよ」
彼女の拳は軽く握られ、笑顔は弾けている。
客たちはそのやり取りに、くすくすと笑いながらグラスを傾ける。
「誘惑は技術よ。あなたはまだ“勢い”で押してる」
「勢いも、若さの特権ですから!」
ふたりの声が交差するたび、店内の空気が少しだけ華やぐ。
閉店後、カウンターに並ぶ二つのグラス。
泡の残るビールと、鮮やかなカクテル。
ふたりは肩を並べて座り、静かに乾杯する。
「…でも、今日の一番人気はあなたの“笑顔”だったわね」
「それ、褒めてます?」
「もちろん。ちょっと悔しいけど」
夜の灯りが、グラスの縁に火花を灯す。
ふたりの関係は、競い合いながらも、確かに寄り添っていた。
追記:
2025年10月20日の#オリジナルデイリーランキング13位に入りました!🎉
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