📘絵本|メグさんと 色のないそら
どんなときも おなじように見えるとは かぎらない。
でも、見えかたがちがっても、
なにかは ちゃんと そこにあるのかもしれない。
——これは、あるふくろうが まだ若かったころの お話です。
ふくろうのメグさんは、
世界のことが うまく見えないなと 感じていました。
毎日つけている ふつうのめがねでは、
なんだか 足りないような気がしていたのです。
「どうすれば 本当のことが 見えるんだろう?」
そう思って、いろいろな「色めがね」を試してみたのです。
赤、青、金色……
めがねをかえるたびに、世界はちがって見えました。
「これが いちばん はっきり見える!」
「やっぱり こっちのほうが 本物かもしれない!」
そうしているうちに、メグさんは 気づかないうちに——
「こういうときは こう見えるはずだ」と、
自分の思いこみや、自分の見方で
世界を見てしまうようになっていきました。
赤のめがねをかければ、
まわりの人たちが みんな 一生けんめい頑張っているように見えました。
青のめがねでは、
どこか さみしそうな空気が 世界を包んでいるように思えました。
金色のめがねは、
なにもかもが まぶしく きらきらと見えました。
「どのめがねが 一番 本当の世界に 近いのかな?」
そんなふうに 日々いろをかえて世界を見ているうちに、
メグさんは だんだんと わからなくなってきました。
これは、本当にそう見えるものなのか、
それとも、めがねの色のせいなのか——。
「どうしてこの人は、こんなふうに見えるんだろう?」
「なんだか、前に会った あの人に ちょっと にてる気がする」
でも、それは 本当に その人のすがたなのかな?
それとも、メグさんの めがねの色で そう見えているだけなのかな?
ある日、メグさんは そっと めがねを外して、
ゆっくりと 空を見上げました。
そこには——
なにも 色がついていない、
ただの 雲と、ただの 空が ありました。
でも、それはどこか やさしくて、
ひかえめで、でも ちゃんと そこにあるように見えました。
「この空と雲は、きっと
だれが どんなめがねで見ても、
ただ そこに あるだけなんだね。」
色めがねをかけると、
世界は 自分だけの色に なるけれど、
めがねを外したとき——
世界は そのままの姿を 見せてくれる。
メグさんは そのとき はじめて、
心の疲れが ふっと抜けるのを 感じました。
それからメグさんは、
色のついためがねも、
色のないめがねも、
どちらも 大切にするようになったのです。
呪文
入力なし