白くま少女の終末譚 (白ラッコ視点)②
でっかい火の玉で街が吹き飛んだり、巨大な蛾が空気組成を作り変えてしまったり、生き残った地域の人々の頭上にも、月を砕いた破片が流星となって降り注いだ。こういうのが地獄っていうんだろう。僕はスイにこんな体験をさせたくなかったけど、一匹のラッコにできることなんて、たかが知れてるのさ。
7日間でだいたいの決着はついてしまった。勝者は誰かって? 誰も勝たなかった。強いて言うなら死神の圧勝。複数のAIが考え抜いた人類への攻撃は、人類が耐えうるキャパを簡単に飛び越えた。飽和した。
シェルターに逃げ込んだ人々、運良く、どの攻撃の直接ターゲットにもならなかった僻地の人々、でも結局、少しだけ人生が伸びたに過ぎない。空気組成の変化が致命的だった。あの蛾、僕の生まれた国の作品らしい。同じミュータントとして、遺憾に思うよ。
スイはまた言葉を発さなくなってしまった。
たくさんの人が消えてしまったのは、もちろんショックだったと思うけど、スイがその気になれば救えたかもしれない命。その罪の意識に苛まれるのだろう。
彼女が心の檻に閉じこもってしまわないよう、僕は言った。
「ねえスイ、旅に出よう。こんなに広い世界なんだから、きっとどこかで生き延びてる人がいるよ。僕たちは寿命が長いから、ちょっとしたお手伝いができると思うんだ」
呪文
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