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機械の国のアリス:3-1章:スクラップ・エリア

使用したAI Stable Diffusion
【1枚め】
スクラップ、スクラップ、スクラップ。
そこいら中に鉄くずの山。
スクラップ・エリアに入ってからもう丸一日半。いまはちょうどお昼どき。
ずーっとスクラップの山が続いています。工場長の言う通り、身を隠すには最適でしょう。ただ、このエリアに入ってから、人間はおろかロボット1台見かけません。隠れる必要さえないのです。
「このまま北に向かえばリグレットにつくのかしら?」
拍子抜けしますが、油断は禁物。気配を殺し、物陰から物陰へ移動しながら、アリスは工場長に持たされた携帯食をパクつきます。パサパサでおいしくないのですが、それでもこんな殺伐としたエリアであれば、食料があるだけでも感謝です。工場長、けっこういい奴かもしれないわね、なんてアリスが思いながら、先が少し窪んでいる場所に来ました。アリスは飛び下りても大丈夫な高さであること、降りた先、また少し這い上がれば先に進めることを確認します。

【2枚め】
進行ルート確定後、窪みへアリスが飛び下りた矢先でした。突然あたりが暗くなり、まるで夜になったよう。
「そんなはずは……」
空を仰ぎ見たアリスの上に、大きな鉄の塊が見えました。そんな物が空中にあったはずはなく……猛烈な速度で落下しきているのでした。
「やばっ」
油断はないつもりでしたが、まさか相手が一言も交わすことなく、アウトレンジから回避不能な範囲攻撃に及んでくるとは、アリス一生の不覚。口から先に生まれてきたアリスとしては、会話という攻撃手段が選択肢にないのは、非常に不利なのです。ですが、言葉ほど得意ではないにしても、機敏さにも少々自信のあるアリス。しかしそこでアリスは気づきます。飛び下りた窪地はスクラップに囲まれていて、すぐには越えられない程度の高さであることを。
「あ。詰んだ……」
逃げ場がありません。もちろん、計算ずくの攻撃でしょう。このポイントに来るのを待って、しかけたのです。とんでもない重量の鉄の塊がアリス目掛けて落下してきます。
「みんな、ごめん」
アリスが持ち前の切り替えの速さを発揮し、涅槃へ旅立つ心構えを完了した直後でした。スポっとアリスの足元が抜けて、一人分程度の幅のトンネルを、アリスは滑り落ち始めたのでした。
「色即是空。空即是色」
さすがのアリスも切り替えが間に合わず、目を閉じ合掌した涅槃モードのまま、シューターのような穴を滑り落ちていきます。すぐに頭上にズンっという振動が来ます。ですが、小さな穴を高速で滑り落ちているアリスに届くことはありませんでした。

【3枚め】
「やれやれ、君はまったく無茶をするねえ」
シューターを滑り落ちたアリスを待っていたのは、草藁のような緩衝材と、その前に立つロボットうさぎでした。
「あの街には馴染めなかったのかい?」
アリスは話しかけられても、しばらく呆然としていました。生→死→生と急転直下すぎて、頭がパニクッています。
「あー、なんというか……助けてくださってありがとう、なのかしら?」
「そうさ、僕が君を助けたんだよ」
「この世界に来たときに会ったうさぎさんよね? でも姿が違うみたい?」
最初に会ったときのロボットうさぎは、もっと大きくて青いボディでしたが、眼前のうさぎはアリス程度の大きさのかわいい白うさぎです。
「中身は一緒さ。僕は何台もあるうさぎボディに思考モジュールをインストールして、世界中のいろんなところで活動できるのさ。スクラップ・エリアのこの場所も、僕の隠れ家のひとつだ」
うさぎはそう言うと、お茶でもいかが? とアリスにスコーンと紅茶を差し出します。あたりを見回してみれば、この場所には家具やお供のうさぎもいて、本当に隠れ家のようでした。
「ありがたくいただくわ。はぁ、生きてるって素晴らしい」
3日前に”センター"で飲んで以来、久しぶりの紅茶です。紅茶はイギリス人のエナジードリンク。アリスはみるみる活力を取り戻していきます。
「それにしても、さっきの攻撃はなんだったのかしら?」
「ここのエリア長だよ。彼は気難しいからね。特に無断の侵入者には容赦がない」
「お話し合いはできる方なのかしら? 例えば10歳くらいの少女がいたくお気に入りの紳士だったりしないかしら?」
「そういう特殊な性癖は、隣のエリアの工場長くらいじゃないかなあ」
あれがレアケースと聞いて、ロボット社会の健全性にアリスも一安心です。
「でも、話し合いができないのなら、やっぱりこっそりさっくり抜けていくしかないわね」
「それは難しいと思うよ。君、攻撃されたとき、正確に位置を把握されてただろ? エリア長はこのエリアに限り、存在する全ての物資を探知できるらしい。君はエリアに入った時点で、ずっとマークされていたんだろうね」
「ならこの場所も危険なんじゃ?」
「ここはエリア外さ。地下400mの奥底にある、大人の隠れ家だからね。あ、ブランデー飲む?」
「お酒はけっこうよ、頭が回らないと戦えないもの」
「それはよい心がけだ。僕なんて深酒が過ぎてね。最初のボディの肝臓ユニットはボロボロだったさ」
ロボットがアルコールを摂取しても、別に酔わないんじゃと思うアリスでしたが、余計なことを言って機嫌を損ねるのは得策ではないので、ブランデーの代わりにもう一杯紅茶をもらうことにしました。
「実はこの隠れ家からリグレットまで、地下鉄で繋がってるとか、そんなラッキー展開はないかしら?」
「さすがにそれはね。君、99%死亡フラグから生還しただけでも、相当ラッキーだと思うけど」
「ラッキーに底はないの。ラッキーが尽きるのは、その人がラッキーを諦めたときだけ」
「つくづく君はタフだね。で、どうするの? 外に出れない今、ここでのんびり暮らすかい? ここのエリア長は24時間眠らず働くから、逃げ出すチャンスはないけれど、10年もすれば転勤になる可能性もある」
「10年! 私、おばあさんになっちゃうわ」それは言いすぎですよアリス。「機械工学の単位も逃して、落第の汚名を着るのも困るわ。それにテレスちゃん達の期待にも応えたい。10年待たせたら、テレスちゃんも激おこだと思うの。そうだ、工場長が5日でエリア移動の許可を取り消すって言ってたわ。そうしたら前のエリアに連れ戻されるそうなんだけど」
「ふぅむ。それも期待薄だね。連れ戻されるには、誰かに見つかって捕まる必要があるだろ? でもこのエリアにはエリア長しかいないわけで。彼は工場長より役職が上だから、彼が君をミンチにするのを優先すると考えれば、それは実行される」
アリスはミンチなった自分を想像しそうになり、慌てて首を振りました。
「ハンバーグにはなりたくないわ。ねえ、うさぎさんがエリア長を説得する、という案はどうかしら? 同じロボット、通じ合うところもあると思うの。酒を片手に語り合って、将来の夢とか、好きなタイプの女性の話しをするといいと思うわ」
「僕もスクラップになる……不法侵入は変わらないからね!」
「そんなに容赦ない方なの? まあ問答無用でキルを取りに来るのは、さきほど実体験させてもらったけど。なぜエリア長はそんなストイックなのかしら。AIロボットがみんな、そんな硬い性格には思えないのだけれど」
HOR511、工場長、そしてうさぎロボット。みんな人間くさい性格で、精神構造はやはり人間を模倣しているんだなとアリスは思うのです。
「彼はさ、真面目な性格なんだよ。彼の仕事は葬儀屋で墓守。そりゃジョークも通じなくなるさ」
「あ、スクラップってそういう……」アリスは合点がいきました。ここに来るまで積み上げてあったスクラップの山は、つまりロボットの死体だった、というわけです。
「彼は1台1台のロボットを分解して弔って、そして積み上げるんだ。君にはどれも同じ鉄くずに見えるかもしれないけど、ちゃんとそれぞれのロボットのお墓なんだよ」
「それでやがてリサイクルとかされるのかしら?」
「怖いこというね、君、家族や友だちが死んだら、リサイクルするのかい?」
「ああ、ごめんなさい。気が回らなくて……。そうよね、ロボットだってお互いを大切に思えば、死んだ後も悼むわね」
「そういうこと。人間と違って腐らないから、燃やしたり埋めたりする必要がないだけで、あの鉄くずはひとつひとつが誰かの想い出なのさ。君がここに来るまで、あの鉄くずを乱暴に扱ってなくて良かったよ。部品ひとつでもポケットに入れてたら、攻撃もあんなもんじゃ済まなかっただろう。
だけどね、最近は弔問に訪れるロボットも減ってるそうだ。AIクィーン様がさらなる生産性向上、効率化、組織化を推し進めているからね。エリア長はそれが気に入らないらしい。
さらに旧型ロボットのスクラップ送りがここのところぐっと増えてる。AIクィーン様の政策で、一定以下の旧式ロボットのメンテナンスを打ち切ったからね。次々と動作しないロボットがでてきている」
アリスは先生の足がもう動かないことを思い出しました。
「やっぱりクィーンのやり方は間違ってると思うわ。私、ますます意見してやりたくなってきたわ」
「それはご立派だけど、ここを動けないんじゃ、クィーンに意見するなんて夢の話しだねぇ」うさぎはブランデーをクイっとあおってから、人間諦めが肝心と、目で諭すようにアリスを見つめます。
「そうね、だから私、エリア長と対話しようと思うの。うさぎさんの話しでは、エリア長はクィーンに不満があるのでしょう? ならきっと説得の余地があるわ」
「会話になる前に潰されると思うけど」
「陳情書よ!」
「ち、ちん? あ、手紙書くの? それなら直接攻撃される心配はないけど……」
「ええ、だからちょっとだけ時間をちょうだいね。あと、ペンと紙もちょうだいね」
アリスは隠れ家内に据え付けられた机に座り、手紙を書き出しました。うさぎはそれを黙ってじっと見ていました。

さて、とうとう次の章にさえ進めないほど遅々としておりますので、引き続き3章が続くのです。

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