アヤナギ荘の日常 #8 -Everyday Ayanagiso-
傘を忘れた詩温とイチノ、笑顔のラウルが手を振る。
「はーい、詩温ちゃん、イチノっち!相合傘しよっ♪」
「……狭い。めちゃくちゃ狭いです」
「デザイン重視の推し傘だもん〜!」
「……肩びしょってんだけど。
ラウル、これ傘って呼んでいいん?」
「イチノっち、水も滴るいい女って感じ〜!」
「そういうノリ、今いらんから」
そんな二人のやり取りを横目にし、
詩温は思わずクスッっと微笑えんだ…。
梅雨の不安定な雨空に包まれた帰り道。
笑い声は、傘より広がって道を満たしていた。
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