『アジサイと双子』
季節は梅雨
「湿っぽくて嫌だねぇ」
「だよね」
彼女たちはよく似てる、
というのも双子だ。
右の活発そうな赤が姉で
左のおとなしそうな黒が妹である
「僕もわかるよその気持ち」
「本当になんでこんなに日本ってのは湿っぽいんだかねぇ、」
「汗ばむから、乾燥した気候に住みたかったね」
「まぁ生まれる場所が決められたら命ってのは言わなかったかもな」
僕は彼女たちを描いてる、
すみきった空にアジサイが背後に咲き誇る。
「命、確かにね、小説だったら、魂を選別するぞとかそんな感じで決められてそう」
そして、ケタケタと姉は笑う
フフフと妹も笑う
「まぁ、想像力は無限大だしな、だから、人間らしいといっちゃらしいが」
「あなたも創造力ではすごそうだけどね」
「僕は違うよ、ただ描いてるだけ、事実のありのままを描いてるだけだよ」
僕は彼女たちを描き、そして、色を塗っていく、本当はもっと空の空気や、感触をこの作品に込めたくて仕方がなかった。
作家魂ってやつかな、一度拘るととことん拘って、気づけば、夜になってしまう的なやつ、凝り性だなと後になって気づく。
だから、今回はシンプルに彼女らを描く、
その方が僕の心は病みを患わなくてすむからだ
「あっ、お姉ちゃん梅雨ってさ、晴れたときはなんだか気持ちのいい感じするよね」
「わかる!」
うんうん、僕はうなずく、
描きながら、彼女らの声を聞くのは楽しい。
「年を取るってのははやいもんですなぁ」
姉がおばあさんのような声でいう
「そうじゃのうそうじゃのう」
妹はそれに応えて低い声で返す。
「なんだよ、昔話でも始めようってのか」
「できそうだね、あっ」
ペンの先が取れた
「どっどうしよう買いにいくのもなぁ」
頭を抱える、
道具を買うにも金はかかるし、
そして、何よりも彼女たちの姿が描けなくなるのが残念だった…
「ごめん…」
だけど、彼女たちは
「いいよ、ていうか今すぐに買いに行こう!」
「買いにいくったって高いんだぞ!」
「3人でお金をだしあえばすむって、全部買う訳じゃないし」
「そうか、ありがとうー心の友よ!いや幼馴染みと書いて運命共同体だよー」
「今のはさすがにひいたわ」
「ドワー!」
僕たちは笑いあう
こんな日々を過ごせるのはあとどのくらいだろうか…
いつか、彼らは結婚する、
僕も、心のなかに淡い花を偲ばせて…
呪文
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