火樹眺望
片や、昔の侍のように黒髪を後ろで束ね、黒く落ち着いた着物姿の青年。片や、白い着物に緋袴の伝統的な巫女装束に身を包んだ艶やかな黒髪の女性。物静かな剣士の雪見清治郎と巫女の天原久音である。
元は大江戸の英傑であった2人が陰陽術の秘法で遥かな未来に降り立ってから、しばらくの時が経っていた。
「この世は様々な技が進み驚くばかりだ。だが花火は我らの時代から続き、今も人々の目を楽しませているとはありがたい。玉屋、鍵屋の掛け声はさすがに廃れてしまったようでござるな」
「ええ。化政の世の大江戸を遠く離れて参りましたが、わたくしたちの時代の伝統が今も続いているのを知ることができるのは、嬉しいことですね」
天原久音も微笑んで花火の準備の様子を見やる。祭りに見合った華やいだ髪飾りは、彼女の黒髪の美しさをいっそう際立たせていた。
「そのことだが、久音どの」青年は言った。
「最近考えておるのだ。もとより我ら英傑は妖異と戦う己の宿星を知り、常人と違う定めを受け入れた者たち。志半ばで倒れたり、遠い異国に散ったり、拙者らのように異なる世界に飛ばされたり...面妖不可解な経験をした者も多いと聞く。
我ら二人は時空を超え、この世界に来た。これもまた宿星の導きというのならば...もしも元の時代に戻れないとしても、この世界で生きていくことを、この世で拙者らができることを、考えていくのも良いのではないだろうかと」
「まあ、清治郎さま...」
「それに...あの子は、話に聞く名高いご先祖である久音どのに出逢えたことを、あんなにも嬉しがっている。久音どのも、とても楽しそうだ。まこと本当の姉妹のようでござるよ」
青年は微笑んだ。
「それだけでも拙者は、この時代にやってきた意味はあると思っている」
「清治郎さま...」
二人の目が合い、しばし無言のままで時が流れた。
「と、ところで久音どの」何やら中空をさ迷った手で取り繕うように腕組みをすると、剣士の英傑はあたりを見渡した。
「肝心の雪音どのの姿が見当たらないようだが、どうしたのだろうか?」
「まあ、本当ですわ。これは面妖な、つい先ほどまでそこにいましたのに...」
月読神社の巫女も振り返った。いつもなら自分を姉と慕い、喜んで一緒にいるはずの少女の姿が、溶けてしまった雪のように忽然と消えている。
「何かを買い求めにでも行ったのでしょうか。もうすぐ花火も始まってしまいます。雪音さん、迷子になっていないとよいのですけれど...」
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という一幕ということで...
ユーザー企画「#花火大会」、せっかく参上するならば和風な面々にて...ということで、レアキャラですが剣士の雪見清治郎(ゆきみ・せいじろう)と巫女の天原久音(あまはら・くおん)で、男女が揃った一枚なのです。
ちびキャラと設定→ https://www.chichi-pui.com/posts/736bc62b-1957-4756-9b20-5382353243b6/
タイトルの「火樹眺望」(かじゅ・ちょうぼう)は特に四文字熟語がある訳ではなくて、美しい花火や町の夜景を示す中国由来の言葉「火樹銀花」(かじゅぎんか)を、これから眺むるといった風情で考えた造語でありまする。🎆
モデル:YakiDofuMix v1 + Regional Prompter + 加工
フォント:しっぽり明朝、Sacramento
花火大会のお題でもう一作、次の作品に進みまする (∩^o^)⊃ https://www.chichi-pui.com/posts/de7f5e32-fbf2-4917-ab41-2dd3bce04449/
呪文
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イラストの呪文(プロンプト)
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- Scale 7.5
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- Sampler DPM++ 2M Karras
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