アンドロイドの目覚め。-ロムの記録
「まぁ、私は形から入るタイプなんでね」
用意した人工皮膚を調整しながら、博士は絶妙に外した答えを返す。
元々、シェルターに来るまではただの旅人に過ぎなかった博士がどうやって私を作ったのか。
その答えは簡単で、素体は元々あるものを流用し、必要なパーツを継ぎ接ぎしただけだからだ。
私の身体は元々「バトラー型」と言われる、身辺警護という名目の戦闘に対応した高級モデルのものだったらしい。
ある一人の人間が所有していたもので、シェルターに逃げ込む最中で暴走した破壊兵器から主人を守る為、身を挺して攻撃からかばった結果、頭部を大きく破損したらしい。
動作異常を起こしながらも主人に寄り添い歩いていたが、シェルターに到着する寸前で事切れ、なんとか修理できないかと持ち込まれたという。
シェルターには「ジャンク屋」と呼ばれる機械修理の専門家が一人いたのだが、損壊の影響はかなり深刻だったようだ。
身体機能を制御するパーツは焼き切れており、バトラー型に対応する修理パーツは在庫が無く取り換え不能。
また、主要な記憶メモリは大部分が失われており、例え再起動したところで過去の記憶は殆ど無くなってしまっている。
胴体は修理可能な程度の破損だったものの、こちらもバトラー型のパーツは無く、汎用モデルのパーツへの取り換えのみが可能であり、起動したところでこれまで通り稼働することはもはや不可能だという結論に至ったと言う。
結局持ち主は無事だったメモリだけを引き取り、残る胴体はジャンク屋に残して立ち去った。
その後、博士がジャンク屋にやって来た。旅の途中で手に入れた物の中の幾つかがジャンク屋のお眼鏡にかなったらしく、それらと引き換えに胴体と修理に必要な他のパーツを手に入れた。
そして、博士はジャンク屋の助言を得ながらそれらを組み立て、自分の持っていた人工知能「MUNI」の分体の分体を私に搭載した、というわけだ。
つまり厳密にいえば、設計はジャンク屋、組み立てが博士、ということになる。
奇しくも、私には普遍的な人間と同じように二人の人間から生まれ、両親を持つアンドロイドとなった。
……尤も、ジャンク屋にとってはただの売り物に過ぎないであろうが。実際、ジャンク屋の方から私に関わってくることは無かった。
「できることなら、完璧な見た目にしてしまいたいと思ったんだけどね……」
剥き出しの機械パーツを人工皮膚で丁寧に覆い隠しながら、博士は呟く。
シンカロンは、一目でアンドロイドであることが分かるように、目に見える箇所に機械部品を取り付けることが義務付けられている。
その為、博士の希望はかなわない。
「ジャンク屋がちょうどいいものを見繕ってくれてよかったよ。この程度なら許容範囲だ」
そう言って博士がちらりと目線を向けた先には、聴覚の拡張ユニットが置かれていた。耳に取り付けるタイプのパーツだ。
これなら、所謂ヘッドホンやインカムのようなものだと考えれば、確かに違和感は少ないだろう。
「何故そこまでこだわるのですか?」
「さあね。実のところ、私自身よく分からないよ。でも、君が人間のように生きてくれたら嬉しいなって、そう思うんだ」
博士は屈託のない微笑みで、曖昧な答えを返す。
博士専用の人工知能と同じものを持っている筈なのに、私にはやはり博士の心の底は分からなかった。
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