お家再興のために身を捧げたお嬢様~episode2~ ②殿は当主の務め
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鬼──
日本では最もポピュラーな魔物であり、その中でも最強の力を持つと言われる魔物は、魔王の一柱として君臨している。
「罠に全部引っかかってくれるから何とか戦えていますが……これ、ヤバいですね」
「脳筋……というより、かわすつもりがありませんね。あえて受けているってところでしょうか」
表向きは和琴の奏者の家である姫川家は、琴で使い方を学んだ弦に魔力を巡らせて退魔の武器として戦う。
蜘蛛の糸のように張り巡らせた罠は、次々と鬼を襲い的確にその足を止めるが、ダメージとしては決定打に至らない。
「あれだけ強い肉体があれば、小細工するより、真っ向勝負が一番強いでしょうね。しかもそれに溺れず、鍛錬も積んでいる。その鍛錬が数百年……。気が遠くなるわね」
姫川家の当主、姫川明夜は敵の力を把握すると、一門の戦闘員に指示を飛ばす。
「いい。今日の目的ああくまで『防衛』。それを忘れないでね。守りに徹すれば、必ず退けられる相手よ」
優位な場所での戦いに、ここで倒してしまいたい気持ちは当然あった。
自由の身になるために、いずれは倒さなければならない相手ではあるが……自分の都合のために仲間や町の住人を危険に晒すわけにはいかないのだ。
だが──
そういう明夜だからこそ、一門から慕われているのだ。
明夜が今どのような状態にあるかは、一門の人間は察している。
姫川一門の、つまりは自分達のために、意に沿わずに男に身を捧げている少女をどうにか救いたい。
そのためには魔王を倒した報奨金が不可欠だ。
つき従った一門の人間は、明夜以外ほぼ全員がこの場で魔王を打倒すつもりでいた。
だが……その当主への想いが、仇となる。
好機を逃すまいとした一部の門徒が暴走。
その隙を逃さなかった鬼の突進により、防衛線は総崩れとなっていく。
──それから1時間後。
鬼の一撃を防ぎきれず、吹き飛ばされた明夜は地面に語膝をつきながら自分の倍以上はあろうかという背丈の魔物を見上げていた。
「大将自ら殿か。悪くない心がけだな」
「それはどうも……」
この場に残されたのは、明夜と鬼の二人だけ。
明夜は当主としての強権を発動し、一門を撤退させ……。
鬼につき従っていた魔物の生き残りはといえば、全て明夜の足元で死体となっていた。
「自分を囮にして寄ってくる魔物を一網打尽とはな。それがお前の戦い方か?」
「……」
「判断は悪くない。お前以外じゃ、足止めにもならなかったろうからな」
「いや、もう1人、魔力量ならお前に負けない奴がいた気もするな。まあ、撤退を指揮する奴も必要だったってことか」
鬼の言う通り、それが姫川家の当主に課せられた戦い方だった。
美しい容姿と質のいい膨大な魔力を持つ退魔士を無視できる魔物など存在しない。
何もしなくても魔物は群がり、結解のように張り巡らせた弦の前に勝手に切り刻まれていく。
「蜘蛛みたいな戦い方だな。悪くはねーが、通用するのは虫同士だけって話だ。お前だって命のやり取りの最中に蜘蛛の巣がからみついても、さして気にしないだろ?」
「……っ!」
残された弦を蜘蛛の巣を払うように魔物は払う。
巣を失った蜘蛛となった明夜に、魔物に抗する術はもうなかった。
「さて。このまま街になだれこんでやってもいいんだが……付き合ってやるよ。無視していけるほど涸れてもいないんでな」
自らの身を囮にして目的を果たす覚悟は変わらない。
この場に赴いた時から明夜の狙いは魔物の足止めだ。
力で敵わなかった以上、それを出来る術は一つしかない。
「……好きにしたら?」
破損し、薄汚れた着物から覗く白い肌。
赤面しながら、ずれかけていたブラジャーをずらして、小さな膨らみを鬼へとみせつける。
「そうさせてもらうぜ!」
未熟な色気不足の挑発に乗り、鬼は明夜の手を掴み力づくで中空へと持ち上げるのだった。
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鬼との戦いは画像が用意できなかったためにほぼ割愛。
圧倒的戦力差に創意工夫を尽くして戦いましたが、敵わず敗北ということで。
退却中の一門と、街に残る人間の避難の時間を稼ぐ健気な明夜ちゃん。
キモオヤジだけじゃなくて、鬼にまで身を捧げることになっちゃったね!
ちっぱいに挑発、生成できた画像、結構お気に入りです。
次回、とうとう魔物の手にかかる明夜ちゃん。更新をお楽しみに!
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