そうしてふたりは相対した
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囲まれていた。
眼鏡に巫女装束の若い狐はこちらを呪い狐とそれに操られた憐れな人間の二人組だと思ったらしい。
探し物があってここに来ただけで、と説得を試みたが無駄だった。
貴方は呪い狐に操られているんです、彼女から離してあげます、と私の言を全く信用してくれない。
あげく、そんなやり取りをしている間に騒ぎを聞きつけた警備隊に囲まれてしまっていた。
参拝客も避難して物々しい雰囲気と物々しい狐の警備隊だけが包囲している。
彼女らは刀や弓などの武器を構え、そして変わった着物を着ていた。動きやすそうではあるが、男性には違う刺激があって集中力を削ぐのに有効そうだ。
荷物袋から自作の唐辛子爆弾をこっそり取り出しながら思案していると、化け狐は警備の狐達から目を離さず私に言う。
「おい、お前の持ってきたなまくら刀でいい、儂に寄越せ」
――しかし、そんなことをすれば却って
「誰も殺しはせん。お前は操られている人間らしいから阿呆のふりして座っていれば危険は無かろう」
ざ、と玉砂利を踏みしめ、刀を肩に担いだ。
「すまんな、儂のせいで」
――それは今更ですし、お互い様でもあります
「血の気の多いのを黙らせれば話もしやすかろう」
やや膠着状態があって、警備の部隊の中で指示を出している、隊長格らしき白金の毛が美しく煌めく狐が前方から現れた。
「展開したな?!巫女様は我々の後ろへ!」
隙もなく凛とした佇まい、引き締まった身体に鋭い目つき、間違いなさそうだ。
その狐はあちこち確認をしてからこちらの方へ視線を向けた。
一瞬こちら――化け狐の彼女を見て、はっと驚いた顔をした。
…ような気がしたが、すぐに表情が戻ってしまったので見間違いだったかも知れない。
「先に明らかにしたいことがあって一つ聞きたい。儂らは呪い人形の腕を頼りにここまで辿り着いた。それは、そこに居る人形のもので間違いないか」
隊長格へ向け、この場で唯一緊張感の欠片もなく立ち尽くしているからくり仕掛けの人形を指して問う。
「腕…!あの人形の腕を斬ったのは」
「ああ、腕を飛ばしたのは儂だ。この通り、呪いまみれのせいで調子が悪くて仕留めきれなかったがな」
それを聞いた隊長格は目を見開き、喜びとも興奮とも取れるような感情が溢れだしてくるのを見て取れた。彼女は即座に刀を抜いて臨戦態勢になる。
「…隊士全員へ通達!手出しはするな、オレがこのヒトの相手をする!乱戦で誰かが呪いを受ければ却って被害が出るだろう。このまま戦闘配備だけはしておけ!」
弓や鎖鎌のような遠距離装備があるにも関わらず突然意外なことを言い出した。
「よくわからんが、それは好都合だ」
私としても彼女としても呪いをばら撒きたいわけではない。その点は好都合、だが。
そういえば私は化け狐の彼女がどれほど強いのか、全く知らなかった。
金色の化け狐と白金の眷属狐、ふたりは相対した。
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緑の着物の方は枯葉と書いて『こよう』と自称している化け狐。
白金のレオタード和服な狐は稲荷神社の警備隊長をしている眷属狐の雪柳。
ストーリー結構書いたんですけどなんか説明臭くなっちゃったのでボツにして書き直したのでだいぶ間があいてしまいましたわ。。
呪文
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