57点で、笑った日
「57点で、笑った日」
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②
わたしは学生です。
好きなことは、図書館での読書。
特に最近は「友情」の物語に、ちょっとだけ憧れています。
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③
家に帰ると、ママが厳しく勉強を見てくれます。
【勉強すれば、人生は変えられる】
ママはいつもそう言います。
今の暮らしを手に入れたのは努力のおかげで、
【もう少し高い点を取っておけば良かったって、私はずっと後悔してるの】
だから——
【あなたには、そんな想いをさせたくないの】
【57点なんてダメ。私みたいに、78点くらいは取ってもらわなきゃ】
でも、私はいつも57点くらい。
真ん中よりちょっと上…でも、それ以上にはなれなくて。
「もっと…もっと頑張らなきゃ」
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④
そんなある日、クラスに転校生がやってきました。
名前はよく覚えてないけど、点数は——「12点」。
「えっ、12点……?」
思わず笑いそうになったけど、彼女はとっても元気そうでした。
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⑤
『……zzz……』
12点の子は、授業中に寝たり、先生の話を聞いてなかったりします。
でも、休み時間になると——
『ちょうちょさん、かわいい〜っ!』
走り回って、はしゃいで、笑ってる。
「そんなことしてたら、点数なんて上がらないのに……」
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⑥
そしてまた、テストの日がやってきました。
今回はママに教えてもらったから……今度こそ、きっと。
「よし……!」
そう思って開いたテスト結果——
「えっ……また、57点……?」
好きなことも我慢して、毎日頑張ってきたのに……。
こんなに、努力したのに……。
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⑦
悔しくて、悲しくて、わたしは大好きな図書館でつぶやいてしまった。
「こんなテスト……こんなの、なければいいのに……っ」
ぐしゃっ……!
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⑧
ぐしゃぐしゃに丸めたテスト用紙。
そのとき、声がした。
『ねえ、それ貸して?』
「え……?」
そこには、12点の子がいた。
わたしは戸惑いながらも、くしゃくしゃのテストを渡した。
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⑨
12点の子は紙をそっと広げると、何かを折り始めました。
『こうやって……こうして……ちょっと葉っぱをつけると……ほらっ!』
小さな手から生まれたのは、紙で作られた、かわいいお花でした。
「ふふっ……かわいい……あっ……」
さっきまで、あんなに悔しかったのに、笑ってしまった。
『うふふ、笑ったね』
「うん……これ、ただの紙だ。
見え方が、違うだけなんだ……」
それから、わたしは12点——じゃない。
純ちゃんと、いろんな話をしながら帰りました。
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⑩
家に着くと、ママが待っていました。
【さあ、出しなさい】
「おかえりなさい、じゃないの?」
【何?口答え?——良い点、取ったんでしょうね?】
怖い……でも、逃げたくない。
「……はい」
私は、テストを差し出した。
【なっ……また57点!?
何も変わってないじゃない!——さあ、すぐ復習するわよ!】
「ママ……」
【さあ!】
「ママッ!!……わたしを、見てよ!!」
【なによ……勉強できない57点の子でしょ?】
「違うよ!!
わたしは“奈子”だよ!!
点数でできてるんじゃない!!」
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⑪
ママと、たくさん話した。
ママは、自分の後悔をわたしに重ねていた。
取り戻せなかった過去を、わたしでやり直そうとしていた。
でも——
ママは気づいてくれた。
わたしの気持ちに、ちゃんと向き合ってくれた。
そして、謝ってくれた。
その夜の空は、とても澄んで見えました。
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⑫
今、わたしのお気に入りの図書館は——
大好きな人と過ごす場所になりました。
「ふふっ、純ちゃん……今日もカラフルすぎだよ」
『奈子ちゃんのは、キレイだね〜っ』
おしまい。
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①②③・・・イラスト何枚目か
「」:わたし、57点ちゃん、奈子のセリフ
『』:12点ちゃん、純のセリフ
【】:79点、ママのセリフ
呪文
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